ステレオタイプ(stereotype)、文化の盗用(cultural appropriation)、レイシズム(racism)
前回のエントリーでお笑い芸人が黒人俳優に扮して海外メディア(BBC、ニューヨークタイムズ)で物議を醸したことを取り上げました。
これは割と軽い気持ちで取り上げたのですが、もう少し調べていく内に、これから日本が直面しなくてはならない問題に繋がることに気づきました。
まだ、自分の頭の中で整理はついていないのですが、それを考える材料をブログ主の覚え書きとしてメモしておこうと思います。
なお、前回同様、ここで「黒人」とか、「白人」、「有色人種」という言葉を使うかも知れませんが、「アフリカ系アメリカ人」とか「アフリカ人」とか書き分けていると煩雑になるので単純化しているだけで、それぞれに優劣をつけたり差別的な意味はないものとお断りしておきます。
ステレオタイプ ーイエローフェイス-
前回、顔を黒く塗ったりして黒人の特徴を誇張したメイクアップをすることを「ブラックフェイス」と紹介しましたが、「イエローフェイス」なる言葉があります。
下は有名な『ティファニーで朝食を』(1961年)に登場するYunioshi(ユニオシ)なるキャラクター。典型的なイエローフェイスの例です。演じているのはミッキー・ルーニーという俳優。
この映画は60年近く前のもので、ポリティカル・コレクトネス等という言葉も無い時代で、現在の価値観をそのまま当てはめるべきではないという考え方もあります。しかし、当時、これを見せられた日本人やアメリカ在住の日系人の気持ちは想像に難くありません。
では、つい数年前の2013年に日本の物まね番組で演じられたルイ・アームストロングの物まねはどうでしょうか。
物まねをしているタレントに黒人をバカにしたりするつもりはない、とは思います。多分、レスペクト(尊敬の念)すらあるのかも知れませんが、それをきちんと発信できない限りは残念ながら説得力はなく、Mr.ユニオシ同様、人種の身体的な特徴をメイクによって誇張していると捉えられても仕方がありません。
映画と同様、誰かが勝手にネットにupした動画と共にレイシズムというレッテルだけが空しく拡散されるだけです。
好むと好まざるを関係なく、グローバリズム(地球規模の政策[思考法], 世界主義)やグローバルスタンダード(国際的に共通の基準)を受け入れたら、よほどしっかりとしたナショナリズムを確立していないと飲み込まれてしまうのではないでしょうか。
文化の盗用(cultural appropriation)
“cultural appropriation”という表現を前回のエントリーで「文化の横取り」とブログ主は訳しましたが、「文化の盗用」と訳すのが一般的なようです。
下は「文化の盗用」と”グローバルスタンダード”で見なされた例です。
ファッション誌『Vogue』に掲載されたKarlie Klossというモデルの写真の一枚。
”diversity”(ダイバーシティ/多様性)をテーマにしたものだそうです。
日本人から見たら、確かにヘンテコな着物風のファッションと花魁のような簪(かんざし)ではありますが、ファッションの世界なら許容できる人も多いかと思います。(そうでない人もいるかとは思いますが。)
これは「文化の盗用」といってバッシングされました。
これはどうでしょうか。
Katy Perryというミュージシャンのステージ風景です。“Geisha-Style”(芸者スタイル)と呼ばれました。(ちなみに、西洋で「Geisha」とか「Geisha girl」とかは売春婦と同義だと思われています。これはブログ主は外国人に対して何度かで説明してきました。これは感情の問題だはなく、“fact”だからです。)
妙ちくりんですが、可愛らしいですよね。
ただし、腰から下はこうなっている↓ようです。
下は、昨年)2017年)の秋にサンノゼ・ジャイアンツ(San Jose Giants)というマイナーリーグチームのツィートで、レイシズム(人種差別主義)とクレームがついたもの。
直訳すると「我々、ジャイアンツは『日本の伝統の夕べ』(イベント名)をお祝いします!」という他愛ないメッセージに添えられた動画(GIFアニメ)ですが、これにレイシストとのクレームがつきました。
既に謝罪して削除されていますが、静止画は下のようなもので、
なんのことはない、法被を着た選手?が、一人は鉢巻きをして空手の真似、一人は合掌してお辞儀、もう一人はうちわで扇ぐ動作をしていたそうです。
これが、日本人のステレオタイプのパフォーマンスとして差別的だと非難の的になったのです。
ちなみに、これを伝えるニュース動画を観ると、この日は浴衣を着た現地?の日本人による国歌の斉唱、和太鼓のパフォーマンスなどがあり、この日のイベントはアメリカ人による勘違いな日本文化の紹介ではありません。
動画のコメントでは何人かの日本人が問題ないと言っていますが、外国人らしい人が、勝手に差別だと言っています。
以上は、日本人が対象となった例ですが、他に「文化の盗用」の例として、ファッションショーにおけるアメリカの先住民の羽根飾りをつけたファッションや、白人モデルによるドレッドヘアー、ファッションアイテムとしてのヒンズー教の額の飾りといったものが例として挙げられ、その定義としては、特定の民族の文化的・宗教的イコンやシンボルを、その意味を理解せずに“盗用”することなのだそうです。
その多くは、マジョリティがマイノリティに対して盗用する行為、例えば植民地に対する征服者によるものがそのように見なされるようです。
そしてこれらはレイシズムに繋がるものなのだそうです。
ブログ主としてはこれらに同意するつもりはありません。が、これが“グローバルスタンダード”なのです。(全員が一致した意見という意味ではありません。)
この意味においては、多くの白人は常にマジョリティの側に置かれて常に批判される側、日本人のような有色人種でも相対的にマジョリティであれば批判される側に立たされます。
もちろん、「表現の自由」を理由に反論する意見もあります。が、もし、自分、あるいは他の日本人が思いもかけずに批判される側に立たされた場合、論理的に反論できるかどうか...いえ、論理的に説明しようとしても、これは感情の問題なので、相手が受け入れるかどうか定かではありません。受け入れがたくても「理解」はすべきということです。
ちなみに、サンノゼ・ジャイアンツのTwitterを特に批判したのは、日系アメリカ人市民同盟(Japanese American Citizens League/JACL)という団体です。
この団体について調べたときに、著名なメンバーとしてマイク・ホンダ氏がいたのを知りました。
マイク・ホンダ氏と言えば、慰安婦非難決議を行った日系議員です。
「人権」とか「市民団体」とか「慰安婦」とか言うと、もう、三題噺のようなものですが、日本人が“のほほん”としている間に着実に活動している団体により、こういう世界になっていたのです。
上に書いたような常識や規準(スタンダード)は、使い古された言葉ですが「人種のるつぼ」と呼ばれたアメリカでは既に定着していますが、少子高齢対策として移民を受け入れる方向に進みつつある日本でも他山の石ではありません。
日本人が自らの足元を固めぬまま、この国のあり方を見つめぬまま、このまま進んでしまうとアメリカのような社会が待っているのだと警鐘を鳴らしたいと思います。
【参考】
« 【動画】浜田雅功さんの黒塗り(ブラックフェイス)問題の背景とは? | トップページ | 【ドールハウス工作】 No.370 鞴(ふいご)のミニチュア/miniature fireplace bellows »
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