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2018/01/19

したたかな中国-オーストラリアの空港を1ドルで100年間リース

最終更新: 2018/01/20 10:37

2018/01/17に公開されたチャンネル桜の『世界は今』シリーズの#88を観て驚きました。(リンクは該当の箇所の開始位置)

オーストラリアのパース(西オーストラリア州の州都)の東約260kmに位置するMerredin空港(the Merredin Aerodrome)を中国政府系の航空会社China Southern Airlinesが州政府と100年のリース契約をしていたことが発覚し、現在は滑走路やコントロールタワー、格納庫などの施設の50%が航空会社のもの、まもなく100%所有するという話です。

しかも、リース料は100年間で1ドルとのこと。

 

 

 

 

番組で解説するのは現地在住の一般の方でジャーナリストではないので少し分かりにくいのですが、調べたら昨年末(12月28日頃)のいくつか記事(※1)が見つかり、もう少し詳しく分かりました。

これを明らかにしたのは『The Australian』という有力誌で、この密約がなされたのはなんと1993年。

 

中国政府の目的はこの空港をパイロット養成学校専用に使うためで、既にオーストラリア国内にはいくつもの中国所有の学校があり、2035年までに110,000人のパイロットを養成する必要があるそうです。

30年以上も前に既に50年先、100年先まで計画を立てているという中国のしたたかさには驚かされます。

 

中国に対してこのような契約を結んだ表向きの理由は維持コストの問題(レンタルと異なりリースなので、維持管理費はリースした側が負担)ということですが、一方、中国がこのように海外でパイロットを養成するのは、中国国内ではスモッグや軍事的な理由で航空制限があること、英語を話せる教官が不足していることが理由だそうです。

オーストラリアにとって問題は、100%中国の支配下になってしまうと、部外者は滑走路などの施設の利用に中国側の許可を得る必要があることです。(この航空学校自体は安全基準の問題で一旦営業を停止させられているようです。)

 

一昨年にはダーウィンの港湾を中国企業に99年間貸与することを決め(※2)、アメリカの怒りを買いました。

また、昨年末には中国共産党と関係する富豪との癒着で野党議員が辞職に追い込まれ(※3)ましたが、それも、既にその2年前に同様の事件が発覚したことを受け、スパイ活動や内政干渉の阻止を目的とした改正法案が出された矢先とのことです。

現オーストラリア首相のターンブルは親中国の姿勢を一変、日本にすり寄ってきた(※4)とのことですが、ようやく、中国の恐ろしさが分かったのでしょうか。

 

そう言えば、オーストラリア海軍に日本のそうりゅう型潜水艦導入を断念させて中国製の潜水艦導入か?と言われてたのはどうなったかと思ったら、“中国の“内政干渉”もあって結局は頓挫”(※4)だそうです。(現状はどうなっているのか調べたところ、フランスが受注。しかし、完成の遅れが予想され、新たな問題になっているとのこと。※5)

 

しかし、オーストラリアの失敗を笑うことはできません。日本は散々中国のしたたかな姿を見ていてもスパイ禁止法の法案すら出ないのですから。

日本も水源地周辺の土地など、中国人に次々と購入されています。こういったことは、自民党の議員などからなんどか国会で取り上げられていて、例えば、昨年(2017年)11月27日の予算委では菅原一秀議員が質疑していたのに、報道はスルー。たまたまNHKの中継がニュースに切り替わった間という痛恨の時間配分ミスもあったのですが...→『【国会】2017/11/27衆院予算委を自民党中堅議員がネットで実況解説』(だから野党の質問時間なんて減らしていいのです。)

 

※1 参考記事

 

Anger over WA airport partially owned by Chinese government

There is outrage in Australia’s aviation circles that a little-known airport in Western Australia may soon be completely owned by the Chinese government.

According to The Australian, China’s largest and state-owned airline, China Southern Airlines, effectively controls the Merredin Aerodrome, located 260 kilometres east of Perth.

The airport’s runways, control tower, hangars and all of its assets are 50 per cent owned, and may soon be fully owned, by this Chinese government company.

The Australian revealed that China Southern Airlines secretly paid the West Australian government $1 for a 100-year lease, to use Merredin as a base to train thousands of Chinese pilots for employment in the world’s fastest-growing aviation market.

That the Chinese government effectively controls the sole airstrip of any Australian town, is unusual – but the entire situation is prompting even more questions since the pilot training school was recently shut down due to safety concerns.

The company has continued to pay millions of dollars in wages, without any students, since March this year, the Australian reported.

Another bone of contention is that anyone who wishes to land at the aerodrome must seek approval from the flying school.

“It is outrageous that an Aussie pilot can’t go to a country airport without getting approval from the Chinese to land there,” said Australian entrepreneur and former chairman of the Civil Aviation Safety Authority, Dick Smith.

Smith also went on record to say he believes that the airport should not be owned by a foreign company or government.

“I’ve never heard of this happening anywhere.”

CASA remained tight-lipped about China South Airlines interests in Merredin airport.

A CASA spokesperson told The Australian that “the regulator would not publicly discuss details of its dealings with aviation organisations unless serious action was taken, such as suspending or cancelling a certificate.”

“CASA and China Southern have been working to address identified safety and regulatory issues over a period of time,” the spokesman said. “CASA is hopeful that China Southern can meet all requirements as soon as possible.”

 

The Australianの後追い記事。コメントが付けられる記事で、現在670以上のコメントがついています。

 

Need to cut red tape, costs to restore pilot training

The Australian
12:00AM December 28, 2017

In September, The Australian’s Higher Education section published two stories on the mess in Australia’s aviation training sector. John Ross reported that the problems had sparked safety concerns and warnings that Australia would squander the opportunity to take advantage of business opportunities from Southeast Asia. Only now is the gravity of the debacle becoming clear, with the Turnbull government set to allow foreign pilots into Australia on temporary work visas. The decision by Home Affairs Minister Peter Dutton is sensible, with pilot shortages responsible for the cancellation of planned regional flights and the grounding of aircraft. The visas are a short-term fix, however.

New Transport Minister Barnaby Joyce, together with the industry and training sector, must reform flight training to ensure Australia can again provide sufficient pilots for the nation’s needs and capitalise on opportunities in the Asia-Pacific region. There would be no shortage of applicants. Many young people recognise that flying is an exciting, interesting career with opportunities for travel and promotion, including aspiring to fly the world’s most sophisticated passenger aircraft such as the Boeing 787 Dreamliner.

Like businessman Dick Smith, a former chairman of the Civil Aviation Safety Authority, many Australians will be angered by the fact the Merredin aerodrome, 260km east of Perth, is effectively under the control of a Chinese government enterprise, the state-owned China Southern Airlines. Under a secret deal in 1993, the company paid the princely sum of $1 to the West Australian government to lease the airport for 100 years as a base to train thousands of Chinese pilots.

The training school, which has suspended operations after CASA raised safety concerns, is one of several Chinese-owned aviation colleges in Australia. China will need an extra 110,000 pilots by 2035 but it relies on other countries for training because of its heavy smog, military-controlled airspace and a lack of English-speaking instructors. Writing in The Australian today, Mr Smith blames failed government policy dating back decades for the mess. He says skyrocketing regulatory costs and pointless red tape are forcing flying trainers to sell out at bargain rates to the Chinese. As a result, general aviation flying hours, including training, have fallen by 40 per cent in five years.

One of Australia’s most experienced flight trainers, Glen Buckley, head of Melbourne Flight Training, says he has just spent $700,000 to comply with new CASA regulations and that the impost almost broke him. Mr Buckley has received repeated offers from Chinese companies to buy part of his business, as have flight trainers at Bankstown, west of Sydney. Aircraft Owners and Pilots Association chief executive Ben Morgan, who believes more than half of flight training in Australia is carried out by foreign companies, wants CASA to allow independent instructors, similar to those who train most US pilots, to play a greater role. In the national interest, Mr Joyce must work with the industry to find solutions.

 


※2 参考記事『豪、中国企業に北部ダーウィンの港湾を99年間貸与 海兵隊駐留の米国は反発』

 

2016.3.31 21:42更新

豪、中国企業に北部ダーウィンの港湾を99年間貸与 海兵隊駐留の米国は反発

 米海兵隊が南シナ海をにらんで駐留するオーストラリア北部ダーウィンで、駐留拠点にほど近い港湾を中国企業に99年間貸与する契約が締結され、米国と同盟国の豪との関係が冷え込んでいる。「アジア重視」を唱えるオバマ米大統領にすれば顔に泥を塗られた形で、豪側に不満を表明。31日から米ワシントンで始まる「核安全保障サミット」で関係諸国との連携強化を目指すオバマ氏を横目に、中国が米国の同盟関係にくさびを打ち込んでいる。(ネピドー 吉村英輝)

 豪北部準州は昨年10月、インフラ関連の中国企業「嵐橋集団」に、ダーウィン港の商業用港湾施設を約5億豪ドル(約430億円)で99年間、貸し出す契約を結んだ。嵐橋集団は中国軍とのつながりもささやかれ、3月20日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「中国は米と豪の海軍活動をスパイする最前列を購入した」という専門家の見方を報じた。

(中略)

 豪の安全保障専門家らは嵐橋集団について「中国軍のフロント企業」などと警告したが、政府はその後も態度を変えず、経済効果を主張。「通常の商業活動」とする中国外務省と歩調を合わせる。豪財務相は3月、外国投資の審査を厳格化すると発表したが、港湾の資産価値(3億9千万豪ドル)を大幅に上回る契約額に疑問の声も出ている。

 親日派とされたアボット前首相を昨年9月、党内クーデターで引きずり降ろしたターンブル氏は中国ビジネスで成功を収めた人物で、豪が依存を深める経済を武器に、中国が同盟関係に割って入った格好だ。

 

※3 参考記事『豪野党議員、中国との癒着スキャンダルで辞職』

 

豪野党議員、中国との癒着スキャンダルで辞職

2017年12月12日 13時32分  AFPBB News   

【12月12日 AFP】オーストラリアで12日、中国共産党とつながりを持つ中国人富豪との癒着が取り沙汰されていた野党・労働党のサム・ダスティヤリ(Sam Dastyari)上院議員が辞職した。同国では政府が外国のスパイ活動や内政干渉を阻止するための改正法案を議会に提出すると発表したばかりで、中国から激しい反発を受けていた。

 かつて豪政界で強い影響力を持っていたダスティヤリ氏は、自身の電話が情報機関に盗聴されているようだと中国の富豪実業家、黄向墨(Huang Xiangmo)氏に話していたことが明らかになるなど、苦境に立たされていた。

 黄氏は労働党と与党・保守連合の双方に献金しており、昨年には黄氏の企業からダスティヤリ氏に対して弁護士費用が支払われている。

 ダスティヤリ氏をめぐっては、中国メディアが主催した記者会見に黄氏と一緒に出席し、南シナ海(South China Sea)問題について労働党と異なる見解を述べたとも報じられた。さらに今週に入り、党の外交問題担当者が2015年に香港を訪問した際、民主活動家らと面会をしないよう圧力をかけていたとして同氏への非難が集まっていた。

 オーストラリアでは、国の情報機関の調査で2年前に大物政治家が中国当局とつながりを持つ富豪2人から献金を受けていたことが発覚したとメディアが報道。これを受けてマルコム・ターンブル(Malcolm Turnbull)首相が調査を指示し、スパイ活動や内政干渉の阻止を目的とした改正法案が発表されたばかりだった。

 

※4 参考記事『日本にすり寄る豪州 ターンブル首相18日訪日、政権テコ入れ 中国離反、米とは関係悪化』

 

日本にすり寄る豪州 ターンブル首相18日訪日、政権テコ入れ 中国離反、米とは関係悪化

2018.1.18 07:51

 【シンガポール=吉村英輝】オーストラリアのターンブル首相が18日に訪日する。2015年9月の“党内クーデター”で安倍晋三首相の盟友だったアボット前首相を追い落とし、有力視されていた日本の「そうりゅう型」潜水艦導入を退けた。親中派の元実業家として知られ、経済立て直しに中国との関係強化を掲げたが、中国の“内政干渉”もあって結局は頓挫。同盟国の米国との関係もギクシャクするなか、日本からの支援を取り付け、政権基盤のテコ入れを図る姿勢だ。

 豪公共放送(ABC)は16日、在キャンベラの中国大使館が昨年10月に最大野党・労働党の議員十数人を夕食に招き、豪政界への政治工作疑惑の払拭に努めたと報じた。その数日前、豪政府幹部は国内の学生に対し、中国共産党の影響力に備えるよう、異例の呼びかけをしていた。

 豪政府は先月、中国を念頭に、外国人から影響を受けた国内組織や政治献金の監視を強化する措置を法制化。中国との癒着が指摘された労働党のダスティアリ上院議員が辞職表明に追い込まれるなど、豪中間のつばぜり合いは激化している。(中略)

 国内では、二重国籍問題で議員の辞職が相次ぎ、かろうじて過半数を維持する保守連合の政権が揺らぎ、首相の支持率も低下している。

 こうした中、注目されているのがターンブル氏の訪日だ。有力紙オーストラリアン(電子版)は14日、「日本との軍事協定で中国の威力に対抗」と題した記事で、日豪首脳会談で議題になると予想される自衛隊と豪軍の共同訓練に言及。豪戦略政策研究所(ASPI)のピーター・ジェニングス所長は、太平洋戦争で1942年に日本から攻撃を受け、現在は米海兵隊が巡回駐留する北部ダーウィン港に触れ、「3カ国演習の機会増加に期待する」と強調した。

 

※5 豪コリンズ級潜水艦後継問題の現状

Wikipedia『コリンズ級潜水艦更新計画』に分かりやすくまとめられていますが、オーストラリアの潜水艦については元々現有潜水艦がポンコツ過ぎて使い物にならないこと、豪海軍は日本の潜水艦が欲しかったことから、日本が本命視されていたのですが、その当時は国内総生産に拘る世論の影響もありました。(ただし、海軍は自国の造船技術に懐疑的)

紆余曲折があり、フランスが受注したようですが、2017年9月にはこのような報道が出ています。

 

2017年9月27日
豪海軍、20年間、潜水艦隊なしの可能性も

日豪プレス(ソースはABC “Navy may be without submarine fleet for two decades due to replacement plan, experts say”)


現艦隊の老朽化と「野心的すぎるスケジュール」

 ANUの防衛戦略研究者、ヒュー・ホワイト教授は、豪海軍の現コリンズ級潜水艦隊が老朽化する一方で、後継艦隊建造スケジュールが非常に野心的すぎるため、20年ほどは潜水艦隊のない海軍になる可能性があるとしている。

 ABC放送(電子版)が伝えた。

 報告書の著者は、新艦隊の第一隻が就役するのは現コリンズ級艦隊の最後の1隻が退役するのと同じ2033年になるが、新型艦は複雑な設計のため、完成が遅れる可能性も大きいと述べている。また、旧式艦隊を新式艦隊と交替させるこのプロジェクトでは、他の国の海軍の同様な規模の潜水艦よりも3倍も高くつくことが予想されている。

 この報告書編成に参加した元公務員や国防アナリストのグループは、「地域の緊張が高まっている現在に潜水艦隊が不在になるのはタイミングが非常に悪い」と述べている。また、報告書編成の統括責任者を務めたヒュー・ホワイト教授は、キャンベラのナショナル・プレス・クラブでの講演で、「設計の複雑さから建造に遅れが出ることはいくらでも想像される。この報告書は、警鐘を鳴らし、再考を求めるためにここに発表するものだ」と語っている。

 さらに、「ただでさえ潜水艦問題は難しいのだが、現在進行中の潜水艦プロジェクトは非常な困難に陥っている。世界のどこでも潜水艦建造が5年や10年遅れるのは並だが、オーストラリア国防の海軍力に波及するだろう」と語っている。

 また、「訓練艦がないとなると船員や船長の技能が衰えていくことになる。

 また、「コリンズ級の退役と新造艦の就役のギャップを埋めるため、フランスからできあいの潜水艦を6隻買うよう勧めている。

 

 

 

 

 


 

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