【国会】与野党質疑時間配分の変遷-民主党政権で与党の質疑時間を減らしたのは本当か?-
10月31日付読売新聞の記事に少し説明がありましたが、前の記事で引用した産経の記事とほぼ同じ内容なので、産経記事から引用します。
時間配分の割合は、麻生太郎政権(平成20~21年)までは「与党4、野党6」が慣例で、その後の旧民主党政権では一時、「与党1、野党9」となった。現在も「与党2、野党8」と数の少ない野党議員に多くの時間が与えられるため、質問内容が重なるなどの弊害も生じている。
なお、 10月31日付日経新聞『衆院質疑 時間巡り攻防』では、論調は与党の質疑時間を増やすことに反対で、わざわざ識者(大山礼子・駒澤大教授〔政治学〕)の「野党への傾斜 意義ある慣行」と片側の意見だけ掲載しており、産経が書いている「与党4、野党6」という数字に対しては、「自民党の指摘だが公式な集計はない」旨書いています。その一方、現・立憲民主党の長妻昭氏の「野党時代の自民党が強く主張して今の配分比となった。」という証言はそのまま掲載しています。
産経新聞の「旧民主党政権では一時、「与党1、野党9」となった」という記述に対しては、衆院事務局の解説として「与党2、野党8になったのは、旧民主党が野党になった12年の政権交代の後」とも書いています。
産経の記述は簡単すぎてその根拠も分かりませんが、日経の記事は事実を書いているように見せて、都合のよい証言だけを拾っていると指摘しておきます。
実際、旧民主党政権下で与党の質疑時間が短かったことを裏付ける記事は存在します。これを読むと、民主党が質疑時間をいらないと言ったように読み取れます。
民主、国会質問する?しない? 小沢ルールへの対応迷走
2009年10月29日7時29分 朝日新聞
http://www.asahi.com/seikenkotai2009/TKY200910280400.html
民主党が国会で質問するのかどうかで迷走している。小沢一郎幹事長の「政府・与党一元化」論を貫徹すれば質問はいらなくなるが、論戦の主舞台の予算委員会などで質問したいという議員の思いも強い。明確な方針がないまま臨時国会に突入している。
山岡賢次国会対策委員長は来週の衆院予算委員会は民主党の質問なしに1日で終えたいと語っていた。だが、28日には一転、「我が党にだって質問したい人がいる」と質問を認める可能性を示唆した。
対応が揺れるのは、小沢氏の理念をどう具体化するかが定まらないからだ。小沢氏は「国会は政府と野党の議論の場」と語り、衆院本会議での首相の所信表明演説に対する代表質問を回避。「小沢ルール」を突き詰めれば、政府が提出する予算案や法案の審議で与党の質問は不要になる。
だが、議員にとって質問は自身の力量を試す機会。テレビ中継で地元に向けて活躍をアピールできる場でもあり、山岡氏の「質問なし」発言には若手から不満が出ていた。
衆院側の不満を高めているのが参院の例外扱い。輿石東参院議員会長は29日の参院本会議で代表質問に立つ。高嶋良充参院幹事長は27日の記者会見で「参院は再考の府。質問を通じ政府に対する国民の理解を得られる」と語るが、明白な二重基準だ。
板挟みの山岡氏は28日、衆院予算委で民主党が質問する時間があるかどうかは、円滑な審議への与党の協力次第との考えを記者団に示した。「小沢ルール」から生まれた「質問しない」方針は、法案審議をめぐる駆け引き材料になりつつある。(渡辺哲哉)
この記事の中で、「政府・与党一元化」と出てきますが、同じ朝日の記事(会員でないので、冒頭しか読めませんでしたが、)「政府・与党一元化」理論が機能せず、党内で合意形成ができなかったという内容のようです。
党と政府、幻の一元化〈民主党政権 失敗の本質〉
2012年4月7日22時59分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/intro/TKY201204070551.html
審議を打ち切った政調会長の前原誠司を急いで退出させたい賛成派。いすを振りかざして威嚇し、バリケードを築いて阻止する反対派。今年3月末、8日間・46時間半に及ぶ消費増税法案の事前審査の混乱は、党内抗争に明け暮れる民主党の姿を強く印象づけた。
背景には、合意形成のしくみの未熟さがある。民主党は、選挙や国会対策を指揮する幹事長と、政策責任者の政調会長を入閣させ、政府・与党全体で政権運営に責任を持つ「政府・与党一元化」をめざした。それは、政権を安定させる「政局回避装置」としても機能するはずだった。なぜ一元化が実現しなかったのかは、政権交代直前に代表を退いた小沢一郎の存在抜きには語れない。
(後略)
実は、質疑時間の配分の件で、ネットである元民主党秘書の方のツィートが話題になりました。真偽の程は分かりませんが、これが本当なら、やはり民主党が与党時代に与党の時間を減らしたように思え、また、上に引用した記事にある「合意形成のしくみの未熟さ」とも一致します。
@Tanaka_Kei
民主党政権時に与党の質問時間を大幅に減らしたのは、何も野党に配慮したからではなく、与党内の政策不一致が露わになるのを避けるためだった、って当時民主党で秘書をしていた私は知ってるけど、どこも報じないね19:03 - 2017年10月27日
@Tanaka_Kei
鳩山政権ができた時の小沢一郎幹事長の党運営の基本として
・政策は官邸で決める。党での政策議論はガス抜き。だから議決もしない。
・政権与党なのだから政府に文句言わせない。だから委員会質問もさせない。
だったんですよ。それが後に小沢グループ自身を苦しめるのだが・・・2:44 - 2017年10月28日
話は少し逸れてしまいますが、当時の民主党があまりにも独善的・独裁的で、官僚に手を突っこみ、政府が機能しなかったのは日経ビジネスONLINEの下記の記事を読むとよく分かります。(日経のアカウントでログインすれば閲覧可能だと思います。)
「そこまでやるか!民主党政権 元官僚・後藤啓二弁護士が法的に考える」のバックナンバー
2010年5月19日
政権党と政府はそもそも異なる
2010年5月17日
行政を担うのは政治家か、官僚か?
2010年5月13日
多数決で決められないこともある
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