【政治】日本における「リベラル」の意味は?/世代別「保守・リベラル」のイデオロギー観
公開日: 2017/10/13 最終更新: 2017/10/27 19:17
8月11日に読売新聞に興味深い調査結果が掲載されていました。
『政党観 世代で「断層」/年代別にみた「保守・リベラル」のイデオロギー認識』というタイトルで、記事にはグラフもあったのですが、画像にすると大きいので、ネットで見つけた画像(テレビ画面のキャプチャ)に、そこでは省かれてしまった「回答者自身の立ち位置」を追加したものを掲載します。(もう一つ、「『無党派層』と呼ばれる人たちをどう見るか」という項目もあるのですが、それは省略しました。)
『イデオロギー』とは、説明するまでもないとは思いますが、「思想傾向、政治や社会に対する考え方」のことです。
日本で言う“リベラル”の定義は若い世代には浸透していない
アンケート内容は下記サイトで一部公開されていて、上記グラフの元となった設問は下記の通り。回答者の“立ち位置”と5つの政党のイデオロギーを11段階数値で答えたものを集計したものです。
「読売・早大共同世論調査」 2017年08月14日 10時00分
http://www.yomiuri.co.jp/feature/opinion/koumoku/20170808-OYT8T50102.html
【調査方法】
2017年7~8月 読売新聞・早稲田大学共同世論調査 (郵送全国世論調査)
▽対象者:全国有権者3000人(層化二段無作為抽出法)
方 法:郵送自記式、2017年7月3日調査票郵送、8月7日返送締め切り
有効回答:1963人(回答率65%)【設問】
Q 政治的立場を表すために、「保守的」とか「リベラル」という言葉が使われます。
10がリベラル、0が保守的だとして、あなたの政治的立場はどこにあたりますか。また、5つの政党と、無党派層と呼ばれる人々の政治的立場はどこにあたると思いますか。それぞれ、最も近いと思う数字を○で囲んで下さい。
詳細は後述しますが、現在の日本で言うリベラルとはその日本語訳の『自由主義的』ではなく、
- 憲法改正に否定的、自衛隊の活動範囲の拡大には反対。
- 低所得者に手厚い所得再配分を重視。
と考えられており、そのリベラルと保守の定義に従えば、数値はともかく、50代から上の世代、あるいは平均に示されているような並び順が“正解”になりそうですが、18~20代の感覚はかなり異なるようです。
記事では調査に参加した投票行動論の専門家が「特に若い世代は、『変えようとしない勢力』を『保守』と見ているのではないか」と分析していました。
これから想像すると、この世代は『リベラル』という言葉も、『改革指向が強い』と見ているのだと思います。
イデオロギーの定義から離れて採点すると「自民党が最も改革指向が高いと見られている
実際、この設問とは別に、『改革指向の度合い』についても10(高い)-0(低い)の11段階で問う設問があるのですが、これを平均すると下図のような結果となっています。
イデオロギーにとらわれずに点数を付けると、中間(5.0)より高いのが自民と維新、低いのが民進、公明、共産となり、やや18~20代の回答と似た結果になるのが面白いと思いました。
この設問に関しては年代別の詳細なデータが書かれていないのですが、新聞記事によると、「30代と40代では維新が最も高くて、回答者自身の評価を上回り」、「50代以上では自民がトップ」という結果が出たそうです。
つまり、50代以上は「イデオロギーとしては自民党は保守だが、改革指向は最も高い政党」と見ていることになります。
このブログ記事を後から読み返す時のために書いておくと、2017年8月頃は国会で安倍政権が所謂『加計学園問題』で追求されていたときです。民進党をはじめとする4野党が“国家戦略特区の認定において友人優遇したのではないか”と激しく追求していた時期で、内閣支持率は「支持しない」が「支持」を上回っていた(但し回復基調)一方、政権与党である自民党の支持率は高く、追求の急先鋒であった民進党は落ち込んでいた時期です。(下図)
(出典: https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/political/2017.html )
本来、改革側(でなければならないはず)の民進党が獣医師会という『既得権益』側に立って国会を空転させていたことも関係があるのかも知れません。
共産党や公明党のイメージは掲げる思想や支持母体の宗教団体のせいかと想像します。
日本における『リベラル』とは何か?
上記記事はなんとなく面白いと思って手元に残しておいたのですが、イデオロギー的な意味での『リベラル』が正しく認識されていないと認識しているからか、10月5日読売朝刊に『リベラルとは何?』というタイトルの解説が掲載されていました。
以下は、最初にこの記事を公開したときから内容を変えています。(当初、読売の記事から引用していましたが、日経の記事を参考にまとめました。)
保守対リベラルの構図の源流は第二次世界大戦後の冷戦期にある。世界は資本主義と社会主義に二分され、日本国内では自民党と野党第一党の社会党が対立する55年体制(1955年にこの保守と革新対立構図が確立されたのでこう呼ぶ。本格的二大政党の予感はあったが、選挙を重ねるごとに革新政党は縮小していく。)が続いた。
しかし、1989年の冷戦終結(11月のベルリンの壁崩壊→12月米ソ首脳マルタ会談による冷戦終結宣言)でイデオロギーの対立は崩れた。
これにより、国内では、共産党などが掲げて来た革新色の強い主張が忌避される傾向が強まる。
その流れの中で、保守を掲げる自民党との対抗軸として、革新勢力が見いだしたのが、より広い意味で使える『リベラル』という概念だった。
これがジャーナリストの池上彰氏にかかると下のように単純化されます。(10月22日選挙特番での一コマ。)
リベラル=左翼と呼ばれたくない人たちの自称。
この記事の最後に掲載している読売の記事でも下記のような小見出しが付けられています。
日本では革新・左派と同義語
ちなみに読売の記事が出た2017年10月は衆院選の直前で、小池百合子氏が代表となった『希望の党』が民進党の多くを受け入れた一方、政権を取るために外交や防衛で非現実的な主張をするリベラル派(左派)を“排除”した結果、排除された枝野幸男氏を中心として『立憲民主党』を立ち上げたところです。
この立憲民主党を指すのに“民主党リベラル派”と呼ぶので、『リベラル』の意味をあらためて解説したのでしょう。
但し、枝野氏は自らを“保守本流”と呼んでいますが、これについてはあらためて別の機会に考えてみたいと思います。
読日経新聞『「保守」・「リベラル」曖昧』(2017/10/19) 識者の見方
ここでは、記事から、本来の意味での『リベラル』を解説した識者の見方や、解説文の説明をピックアップして提示します。
- 本来、リベラルは個人の自由を重んじ、国家の役割を小さくする立場で、資本主義を基礎づける概念。
- 経済政策での「保守」は政府の関与を抑えて市場に委ねる小さな政府を目指すことを、「リベラル」は政府主導で需要をつくる大きな政府を指向するとこを、それぞれ意味する。
- 米国政治の文脈でも(日本同様)意味合いが違う。
「共和党-保守」、「民主党-リベラル」と大まかに分類され、保守派宗教的価値観を重視し、人工中絶に反対する立場などを示し、リベラルは少数者の権利や福祉政策を重視する示すことが多い。
しかし、米国でもその(=政党による)区別は曖昧になりつつあり、共和党から立候補し当選したトランプ大領は元々共和党員ではなく、その政策も保守やリベラルといった枠では捉えにくい。
- 米国では最近ではリベラルという言葉は「弱腰」というようなマイナスイメージで語られることもある。
読売新聞コラム『リベラルとは何?』
下記は、読売新聞のコラムです。ご参考まで。
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