【加計学園問題】愛媛県獣医師会は2013年に獣医系大学の県内誘致要望書を提出していた
公開日: 2017/08/23 11:10 最終更新: 2017/08/23 13:03
前回の記事『愛媛県で獣医師連盟会費の支払い拒否続出』に追記して書こうと思ったのですが、新たなエントリーとしました。
当初は産経のみの報道でしたが、その後、日本テレビ(前回記事に愛媛県連インタビュー動画リンクあり)、中日新聞、北海道新聞等、左翼系(反政府系)メディアも続々と報じています。
- 獣医師会政治団体「離脱」が増加 加計問題で愛媛(中日新聞 2017年8月22日 22時45分)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017082201002049.html?ref=rank
- 獣医師会政治団体「離脱」が増加 加計問題で愛媛(北海道新聞 08/22 23:02)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/127253
これはある意味当然のことで、なぜなら、愛媛県獣医師会では2013年(平成25年)5月8日に愛媛県知事宛に獣医師養成系大学誘致の要望書まで提出していたのです。(※当時は国家戦略特区ではなく構造改革特区の時代。)
要望書のオリジナルは、今治市の『「構造改革特別区域」について』という特設サイトの「第24次(2013年度)」にある「添付資料③(PDF 1.2MB)」に納められています。
下は文字に起こしたもの。
要 望 書
(前略)
さて、愛媛県知事におかれましては、国に対し、四国地域が獣医師養成機関の空白地帯であるとして、今治市への獣医系大学誘致を粘り強く構造改革特区提案によってご尽力をなされていると聞き及び、会員一同、心より敬意を表す次第でございます。
本会におきましては、従前より、開業分野の獣医師は獣医系大学の開業獣医師と比較して格段に高度獣医療の恩恵を受けがたいのが実情であり、一方、公務員系獣医師の職場においては、退職者の空席を埋める獣医師確保が近年困難を極めるなど、獣医系大学が偏在する影響は、本県においても獣医師職域の随所に出てきております。
四国初となる獣医系大学が新設できれば、優秀な獣医師の四国地域への提供が格段に円滑になることが期待できるほか、獣医療レベルを大きく高めることにも繋がるものと考えており、これら効果は四国全域に及ぶことは間違いないものと、本会の多くの会員から熱い期待が寄せられているところです。
さらに、今治市への誘致となれば、県下の高度獣医療の充実強化や本会の大幅な会員の増加が期待できるなど、本県の獣医界並びに本会の発展に大きく寄与できるものと確信しております。
つきましては、現在、愛媛県が構造改革特区提案によりご尽力されておられる獣医系大学の県内誘致に、なお一層のご尽力を賜りますよう、ここに要望します。
平成25年5月8日
愛媛県知事 中村時広様公益社団法人愛媛県獣医師会
会長 寺町光博
下は、読みやすいように該当ページのみをjpg化したもの。
一旦ここまで記事を公開します。
以下、追記です。
公務員獣医師の定員割れ県と獣医大学所在地の関係
下図は「公務員獣医師が定員割れしている都道府県と獣医師養成系大学の所在地」を図示したものです。(2017/07/08 読売新聞『基礎からわかる獣医師』特集記事より)
色のついた都道府県が定員割れしている都道府県、小さな○で大学の所在地を表しています。また、四角の枠内の下段に表示されているパーセントは卒業生が地域(大学の所在地と思われる)に就職した割合です。)
参考に横に貼った『公務員獣医 定員割れ7割』(2017/05/30 読売新聞)の全文はこちらです。
よく、民進党の議員などが地元への定着が少ない例に出される北里大(青森県)は9.2%とかなり低いのですが、他の大学所在地とその周辺の県を見ると、特に西日本、と言うか、東北と北海道を除いては、大学所在地周辺では公務員獣医師の定員が満たされているのが分かります。
これを見たら、公務員獣医師が定員割れをしていて獣医系大学の空白地である四国が大学誘致に活路を見いだそうとするのは理解できます。
「共同獣医学部」というのは国立獣医学系の2大学間で実施されていて、各構成大学では共通の教育カリキュラムを編成し、「共同教育課程」として遠隔講義システムで共通の授業を国立8大学が実施している(読売)そうで、卒業者には両大学の連名で学位が授与されるとのことです。( 旺文社教育情報センター『岡山理科大が52年ぶりの「獣医学部」新設目指す!』〔PDF〕より/(平成29年2月)
そもそも、共同獣医学部は教師が不足しているために、単独では必要なカリキュラムがカバーできないことの苦肉の策です。
上記の旺文社がまとめた資料(P.8)にも書いてありますが、
都市部の獣医学系大学は設置地域(地元)から多くの入学者を受け入れ、地元地域へ多くの獣医師を輩出し、地方の獣医学系大学は地元以外からも多くの学生を受け入れ、地元以外に多くの獣医師を供給している傾向がみられる。
というのは、様々な記事で見かける説明なので確かでしょう。
しかし、以下はブログ主の想像も含まれていますが、
- 元々、獣医学部を目指す学生は、大学の所在地よりは難易度を優先する。(※後述)
- 周囲に産業動物が少ない環境の都市部の学生は元々産業獣医師以外の職業への指向があるのではないか?
- 都市部にはペットフードや創薬業界といった企業も多く、選択肢が多い。
- 確かに、獣医系大学の定員は東日本に偏在が見られる(西:18%、東:82%)が、東日本の大学は東京と神奈川に集中しており、東北、北陸以北は獣医系大学の空白地が多い。
等の観点からも分析する必要があるのではないでしょうか。
※愛媛県公務員獣医師の大学選択の要因
![]()
上の表は、平成21年(2009年)11月に今治市によって集計された四国4県の公務員獣医師へのアンケートです。
なお、このアンケートは実施時期がやや古く、今では意識も変わっているかも知れませんが、意外と(?)、獣医学部誘致の熱意は低いように思われます。(その理由の一つは、香川県の公務員獣医師が他県と比べ、突出して“非好意的”な回答をしているからで、そもそも、アンケートの回収率も低いのです。香川と言えば、民進党玉木議員のお膝元ですが...何か関係があるのでしょうか?)
次回に続きます。
追加資料-コメントで論じられている資料(2017/09/06)
コメントで論じられている、東京都と神奈川県の職員採用結果の表を提示します。
- 東京都: http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2016/08/16/01.html
- 神奈川県: http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f4729/p13046.html
【キャプチャ】
東京都
神奈川
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kanakoさん・大師小ブログ主さん
長々と拙いコメント失礼いたしました。
最後に一応、リンクも残させていただきますね。
www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsi/H28jyuishi_allbosyu.pdf
投稿: マヨ | 2017/09/06 19:46
【ブログ主】
マヨさん、再度の返信ありがとうございました。
なるほど、仰りたいのは、
「東京は募集7名(実際に採用できたのは5名)、神奈川は5名(同4名)と、ほぼ定員近い職員は採用できている」(読売5/30付記事)のと「北海道は何度も再募集をかけているのに定員割れ」というのを同列に『定員割れ』と扱う(読売7/8付記事の色わけ地図)のはおかしいのではないか?
ということですね。
事情にお詳しいようなので、下記の発言にはそのまま受け取ることにします。
>北海道などホントに定員割れを起こしている所では、通年採用・追加採用など、不足が分かった段階で対策を行います。(それでも集まらないのが問題なのですが…)
理解致しました。
貴重な情報をありがとうございました。
KANAKOさん、
コメント、ありがとうございました。
公務員獣医師のなり手が少ない理由もよく分かりました。
色わけ地図に関しては、(獣医師不足の逼迫度に色の濃さなどで差を付けなかったのは)私も他意はないと思います。
あれこれ盛り込んで分かりづらい図になるのを避けただけかと。
なお、8/7付記事では文章で、北海道の公務員獣医師の仕事の大変さは紹介されていましたことを付け加えます。(「300km離れた牧場で採決して、とんぼ返りで戻り分析をする」といった内容で、広い土地をカバーするには不十分な定員、あるいは、検査施設が少ないという状況かと思います。)
投稿: 大師小ブログ主 | 2017/09/06 14:48
なるほど、北海道は大変なのですね。
お怒りはごもっともです。
ただ「数字の違いでは隠れてしまう」という観点で考えれば
またちょっと違う見方もできるのかなと思います。
例えば、広大な面積の北海道の獣医師系大学の総定員は200名ですが、
そもそも地元定着率が30%前後とかなり低いので、
公務員獣医師のなり手はさらに少ないでしょう。
その上、酪農が盛んな地域ですから、その切迫度合いは切実です。
一方、東京近郊の大学の総定員は約380 名で、
東大以外は地元定着率も60%以上とそこそこ高いにも関わらず
決して公務員獣医師へのなり手が多いとは言えません。
しかも、全国で獣医学部総定員930名に対して、実際は水増し入学が横行し、
入学者の実総数は1,200名に登ると国会でも指摘されています。
その多くが関東の大学にも入学しているでしょうから
東京近郊の獣医大学入学者総数は軽く400名を越えることになります。
東京からすれば、「これだけの学生数と定着率があれば、
もっと公務員獣医師のなり手があってもいいはずなのに、
なんで少ないんだ。」といったところでしょう。
東京都の不平も分かる気はします。
こう考えると、一概に
「東京が公務員獣医師の定員割れを嘆くなんておかしい」とも
言い切れないかな、と思います。
東京は「学生数も多く、地元定着率も高い」にも関わらず公務員獣医師のなり手が少ない。
北海道は「土地の広さの割に学生数も少なく、地元定着率も低い」から、
そもそも公務員獣医師のなり手自体がない。
どちらもタイプの違う悩みです。
ただ、マヨさんのおっしゃるように、東京は酪農・畜産が盛んではないので、
公務員獣医師が少し足りなくてもさほど困らないでしょうから
北海道から見ると贅沢だと言えるかもしれませんね。
ご存じだとは思いますが、公務員獣医師が全国的に人気がないのは、
ペットの殺処分に関わる誰もやりたくない仕事もあるからです。
読売の日本地図の表に関して言えば、マヨさんご指摘の数の内情は別として
僅かとは言え東京も定員割れには違いないので、
あのような図にするしかなかったでしょうし、私でもあのような図にしたと思います。
そして、そこに悪意はなかったと思いますよ。
少し前の5/30日の記事にはきちんとした数字をのせているのだし。
ただ、そこにマヨさんのような解説が付記されていたら
新聞記事としては完璧だったかもしれませんね。
私も知らないことだったので、教えて下さってありがとうございました。
北海道のことを心配していらっしゃるマヨさんのお怒り・疑問はよくわかりました^^
長くなってすいません。
投稿: kanako | 2017/09/06 12:38
kanakoさん、ご回答ありがとうございます。
数字の違いでは隠れてしまう、状況の違いをお伝えしたかったのでもう少しコメントさせていただきます。
北海道などホントに定員割れを起こしている所では、通年採用・追加採用など、不足が分かった段階で対策を行います。(それでも集まらないのが問題なのですが…)
それらを行うまでもないと自分で判断しておきながら、「私も定員割れです」と言っているのが東京都などということになります。
確かに、ブログ主さんの併記が無ければ「嘘」だと判断していたかもしれませんね。
なぜ、その時の合格者個人の結果で「定員割れ」に混ざってしまうような指標をわざわざ用いたのか。
私にとっては不思議でなりませんでした。
投稿: マヨ | 2017/09/05 23:44
追記です。
確かに、マヨさんのおしゃるように読売の7/8の記事にも
5/30の数字を載せた方が、東京と北海道を同列だと
勘違いしないですんだかもしれないですね^^
その点では、この二つの記事を同時にブログに載せた
ブログ主さんは公平だと思います。
ただ、読売の記事が
「どこか定員割れということにしておきたい県があった」
というのは、ちょっと考えすぎだと思いますよ^^
投稿: kanako | 2017/09/05 22:14
マヨさん、返信ありがとうございます。
ほんとうに困っているのはどっちなのか、ということですが、
どっちも困ってると思いますよ。
ただ、より困ってるのは北海道ですよね。
北海道の方が定員割れが激しいのは、
読売の載せている数字から見ても一目瞭然ですしね。
読売は「北海道と東京を同列に置いた」というより
単に数字としての事実を書いただけだと思いますよ^^
投稿: kanako | 2017/09/05 21:15
kanakoさん・大師小ブログ主さんこんばんは、ご返信ありがとうございます。
説明不足で申し訳ございません。
「嘘」ということではなく、kanakoさんが仰る通り、合格後に来てくれなかった人がいる
ということを「定員割れ」に含めてしまっているのは良くないのでは?
ということです。
実際に定員割れになっていて「レベルの低い人」とされる人も採用せざるを得なくなっている北海道などと、
「本気でやる気と能力のある人」を上手く確保できないでいる東京都など、
ホントに困っているのはどちらでしょうか?
これらを同列で扱ってしまっては、優先順位を誤解させてしまうような結果になりませんでしょうか?
ということが言いたかったです。
投稿: マヨ | 2017/09/05 20:11
【ブログ主】
マヨさん、KANAKOさん、こんにちは
マヨさん、興味深い情報をありがとうございました。
この合格情報とコメントから、「実際は定員割れをしていないのではないか?」という推測をしていらっしゃると解しました。
確認したわけではないですが、定員割れをしていないのに定員割れという嘘をついてもすぐにバレることだと思います。
この表(統計)から読み取れるのは、合格しても何らかの理由で他の職業を選ぶ(滑り止め?)らしいということですね。
KANAKOさん、当方も同意見です。
投稿: 大師小ブログ主 | 2017/09/05 18:54
神奈川県と東京都のH28年の公務員獣医師の試験結果、
見せていただきました。
東京は、7人の定員に77人が申し込み、最終合格者が9人。
神奈川は、5人の定員に36人が申し込み、最終合格者が6人。
合格者の中に、他の職業を選んだ人がいて
結果として定員割れということです。
確かに獣医師の応募者自体が定員割れというのではなく、
それなりに応募はあったようです。
ただ、東京都職員では、栄養士10人の定員に277人の申し込み
というのもありますから、獣医師の申し込み数が
それほど多いという訳でもありません。
それに、いくら定員に満たないからと言って、
あまりにもレベルの低い人を簡単に合格させる訳にもいかないでしょう。
最初から公務員獣医師になる気もなく
腕試しに試験を受ける人も結構いますしね。
腕試しでもなく、本気でやる気と能力のある人が
もっと多く受験してくれたら定員が満たされると思うのですが、
公務員獣医師は、あまり人気がない職業ですから難しいかもしれませんね。
投稿: kanako | 2017/09/05 17:57
初めましてで失礼いたします。
公務員獣医師が定員割れしている都道府県調査結果おもしろいですね。
どこか定員割れということにしておきたい県があったのでしょうか。
特に、東京都・神奈川県が定員割れとは驚きです。
(5/30)の表で「志願者数と採用予定人数の比較」ではないということも分かります。
www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2016/08/16/01.html
www.pref.kanagawa.jp/cnt/f4729/p13046.html
たくさんいた志願者の中から自分の所に来てくれる人を選べなかったという結果は、
「定員割れ」という言葉のイメージとは異なるのではないかと思います。
投稿: マヨ | 2017/09/05 11:33