【獣医学部新設問題】2017/07/14 京都産業大学記者会見/獣医学部新設断念の理由は?
7月14日 第一報
7月14日、京都産業大学が記者会見を開き、獣医学部新設を断念して2019年4月に向けて総合生命科学部を再編し、新たに『生命科学部(仮称)』を開設することとした旨発表しました。
大学の公式のプレスリリースは下記で読むことができます。
これによると、
- 2004年に獣医学部の設置を構想したが、文科省に接触するも告示を盾に申請すらできなかった
- 加計学園が獣医学部申請により、教員の確保が難しくなった
ことを獣医学部新設断念の理由としています。(下記参照)
【プレスリリースより該当部分抜粋】
本学は2004年に獣医学部の設置を構想し、文部科学省に対して継続的に設置を求めてきましたが、告示等による規制のため進展しませんでした。
そこで、京都府と連携し、2016年3月、この動物生命医科学科を母体として、同学科の強みである実験動物学と感染症を基盤とし、創薬等のライフサイエンス分野に特色を持つ獣医学部の開設を、京都府からの国家戦略特区への提案を通じて申請しました。
しかし、2017年1月4日の内閣府および文部科学省告示を受けて、学校法人加計学園が獣医学部の設置を申請するに至りました。このことにより、我が国の獣医学教育を担う教員が少ない現状の中で、今後さらに申請しようとする大学にとっては、国際水準に資する教育を実施できる優秀な教員を確保することが極めて難しくなりました。
ここで「申請」という表現になるのは、大学や学部の創設は「設置審」にてその内容を審査・認可されますが、1984年(昭和59年)の文科省告示により、獣医学部は設置審にかかる以前に申請すらできないためです。
「2004年に獣医学部の設置を構想し、文部科学省に対して継続的に設置を求めてきました」という発言と当ブログの『【加計学園問題】京都産業大学は文科省から事前に門前払いされていた【2016年10月18日ヒアリング議事録】』を照らし合わせてみると、京都産業大学は国家戦略特区とは関係なく、単独で獣医学部新設を目指していたようで、時系列的に考えると、今治市が特区にて獣医学部新設の見込みがでてきてから京都府と組んで、特区にて学部新設を狙ったのだと思います。(『【加計学園問題】5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯』)
2016年(平成28年)1月29日 今治市を国家戦略特区に指定。
2016年(平成28年)3月24日 京都府が概要を1枚紙で提案。(第8回関西圏区域会議)
特区は文字通り、地域ありきだからです。
ニュースでは編集された会見動画しか流されず、フル動画は無いようですが、読売新聞(7/14(金) 21:08配信 )では下記のように報道しています。
京産大、獣医学部新設を断念「教員確保が困難」
(7/14(金) 21:08配信)
京都産業大(京都市)の黒坂光副学長は14日、同大学内で記者会見し、国家戦略特区を利用した獣医学部新設について「(政府が決めた)2018年4月の設置に向けては準備期間が足りなかった。今後も十分な経験、質の高い教員を、必要な人数確保するのは困難と判断した」と語り、教員確保が難しいことを理由に断念する方針を発表した。
文部科学省が認めていない獣医学部の新設を巡っては今年1月、学校法人「加計(かけ)学園」が国家戦略特区(愛媛県今治市)での開設を認められた。野党は、安倍首相が長年の友人の同学園理事長に便宜を図るため、京産大ではなく、加計学園を選んだのではないか――と批判しているが、京産大側の事情で認定に至らなかったという側面が判明した。黒坂氏は、新設が認められた後に教員を確保する予定であったことも明らかにした。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170714-00050088-yom-pol (リンク先はYahooニュース)
「2018年4月の設置に向けては準備期間が足りなかった。」というのはwebのNHKニュースの動画でも確かに黒坂学長がそう発言しているのですが、
現時点で確定しているのは、
- 今治市が国家戦略特区として獣医学部を新設できること
- 平成30年4月開学の大学は文科省の告示による抑制の適用外であること=設置可能であること
という2点で、(京都が特区として指定されているわけではないのですから、)平成30年(2018年)4月の開学に準備が間に合うとしても、今治の公募に応募しなくてはならず、そのために、特区提案に協力してくれた京都府をあっさり捨てるとは思えません。
何が言いたいかというと、マスコミが報道している“平成30年4月に準備が間に合わない”のが“断念した理由”というのなら、今まで散々野党やマスコミが言ってきた、「平成30年4月開学」という条件が“加計ありき”のためというストーリーに京都産業大学も乗っているように聞こえるのです。
しかし、最初に提示したとおり、プレスリリースでは開学時期の条件は理由にしていません。
ブログ主は、今回の問題ですっかりマスメディア不信に陥っているので、会見では恣意的な質問によってこのような学長の発言を引き出しているとしか思えないのですが...
この期に及んでまでNHKは京都産業大学が加計のライバルなどとテロップを入れているし。
救いなのは、(下はネットで拾った画像ですが、)明らかに恣意的に質問した「不透明な決定だと思っていないのか。」に対して否定している証拠があったことです。
7月15日以降 追加記事-記者との質疑応答ー
【追記】記事を公開してから、読売のサイトで質疑応答を文字に起こしたものを見つけました。また、翌日になって新聞各社が様々な報道をしているので、追記します。
『京都産業大副学長の記者会見での質疑応答』 (2017年07月15日 01時21分)
- http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170715-OYT1T50005.html?from=ytop_main3
(消えてしまうかも知れないので、こっそりとPDFにしておいたものをupしておきます。)
質疑応答の中で獣医学部断念の理由を宣べている箇所です。
――獣医学部断念の理由は。
獣医学部は京都府が申請主体だったが、国家戦略特区の実施主体として私どもは申請した。構想はいい準備ができたが、今年1月4日の告示で「平成30年4月の設置」になり、それに向けては準備期間が足りなかった。その後、(学校法人)加計学園が申請することとなり、2校目、3校目となると、獣医学部を持っている大学は少なく、教員も限られているので、国際水準の獣医学教育に足る十分な経験、質の高い教員を必要な人数確保するのは困難と判断した。
これを読むと、理由として、確かに「平成30年4月では準備期間が足りない」旨の発言をしています。元々教員の確保でできておらず、土地も未購入(これは、申請すらできない状態で確保しろというのは酷ですが)で、例えば1年後なら可能だったのか?と疑問を感じ、この日程を理由として挙げるのは“ずるい”気もしますが、いずれにしても、それだけ今治市(+加計学園)の計画の方が熟度に勝り、既に今治市が国家戦略特区に指定済みということもあり、同市での獣医学部新設が優先されるのは自然のことだと思います。
もう一つ、『今年1月4日の告示で「平成30年4月の設置」になり』と言っていますが、2016年(平成28年)11月18日からパブリックコメントを募集したときの「公示(案)」に既に、
2.上記趣旨を満たす平成30年度に開設する獣医学部の設置を定めた国家戦略特別区域計画について内閣総理大臣の認定を受けたときには、当該獣医学部の設置認可申請の審査については、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準(平成15年文部科学省告示第45号)第1条第4号の規定は、適用しないこととする。
と、開学時期は公にされています。この時に知ったはずです。
なお、「広域的に~」の条件については下のように回答しています。
――昨年11月、国家戦略特区の諮問会議の方針で、「広域的に獣医師養成大学が存在しないところに限り新設可能」との条件が入ったが、この段階で駄目と思った訳ではないのか。
広域的の解釈は色々あるが、関西では大阪府立大学。我々の構想は綾部市で、京都市ではないので、広域ということだけで対象外となったとは思っていなかった。
それにしても、一部の質問は、なんとか今治市や加計学園に対する“恨み節”を引き出そうと必死なことか...
――開設の時期が「京産大外し」につながった認識はあるか。
それはありません。告示を見て判断した。それだけであります。
――不透明な決定という感触は無かったのか。
ございません。平成30年4月が無理だったということ。具体的にヒアリングでもいつというのは答えたことはない。平成29年3月末までに学部設置の認可申請を提出する必要があると。告示からスタートするとなると、3か月あまりで設置計画から教員の確保が必要になる。それはタイトなスケジュール。非常に学部を設置するには、期間があるようで短い。今回の平成30年の開設は、本学にとっては予期していない期日で難しかった。
7月15日以降 追加記事-読売新聞朝刊2面記事ー
『京産大 獣医学部断念 「加計が充実」裏付け』
これ以外に、1面、政治面にも記事がありました。政治面の記事は次回の閉会中審査を巡る自民党と民主党の対立を報じています。
朝日.com-『今治市長「ゆがんでいるのは岩盤規制の方」 前川氏批判』ー
朝日とは思えない、今治市長の前川氏批判のネット記事です。但し、全国紙版に掲載しているかは不明。
(2017年7月10日23時28分)
学校法人「加計学園」の獣医学部の予定地がある愛媛県今治市の菅良二(かんりょうじ)市長は10日、市役所で記者会見し、「獣医学部新設は『構造改革特区』のころから続く市の長い年月の努力が反映されている。ゆがんでいるのは『岩盤規制』の方だ」と述べ、「行政がゆがめられた」と主張する前文部科学事務次官の前川喜平氏を批判した。
菅市長は「市は不屈の闘志で頑張り、『やっとここまで来た』との強い思いがある」と強調。「来春に開学を迎え、大学が末永く歩んでもらえるように全力で取り組みたい」と設置認可に期待を込めた。
開学時期については、「千葉県成田市での医学部新設の日程を参考に『最短なら平成30(2018)年4月』と市が希望し、国へ伝えてきた」と説明し、適正な手続きだったと強調した。 閉会中審査に参考人として出席した加戸守行・前愛媛県知事が今治市での獣医学部の必要性に触れたことについては、「私たちの思いを代弁してくれた」と述べた。(直井政夫)
上に挙げた読売の記事で既に民進・山井国対委員長が「加計学園は文科省、内閣府と打ち合わせをしていたから、18年4月に向けて準備ができた。出来レースだったのは明らかだ。」と言っているように、期日を論点にするようですが、元々、開学時期は今治市の希望であること、京都産業大学は(会見では期日に間に合わないと言っているが、)元々、加計学園より準備が遅れていたこと、会見でも開設の時期が「京産大外し」につながった認識はないと発言していることなどから、それを追求することにどれだけの意味があるのか、甚だ疑問です。
【2017/07/17追記】7月14日付け国家戦略特区WG座長 八田達夫氏コメント
以下、リンクとともに、全文を転載させて戴きます。
京都産業大学の獣医学部新設提案の撤回について(コメント)
2017年7月14日
国家戦略特区WG座長 八田達夫○獣医学部については、今治市の一校目にとどまることなく、二校目、三校目を早急に実現していくのが望ましいと考えております。
○京都府・京都産業大学からは昨年10月に具体的な提案がなされており、二校目の最有力候補と考えていました。結果的に十分な熟度を伴った提案ではなかったことが判明し、大変残念です。
○国家戦略特区WGとしては、今後も、岩盤規制改革に本気で取り組もうとする覚悟と実行力を伴った提案を求めています。
○なお、今回の提案撤回について、まず一校目を先行したことに原因があるかのような指摘が一部でなされているようです。しかし、京都産業大学が昨年提案を行った際、今治市が先行して提案を行っていることは認識されていたはずであり、今治市と京都府の獣医学部が両立することを前提に提案されていたはずです。今回の提案撤回は、国家戦略特区における政策決定が要因ではなく、あくまで、当初の提案後の京都産業大学における方針転換と理解しています。
京都府において、今後、別の大学とともに獣医学部新設を進められる意向があれば、大いに歓迎であり、さらに検討をお願いしたいと考えています。
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