【加計学園問題】京都産業大学は文科省から事前に門前払いされていた【2016年10月18日ヒアリング議事録】
公開: 2017/06/09 09:07 最終更新: 2018/04/14
あらためて2016年の国家戦略特区ワーキンググループでの京都産業大学のヒアリング議事録を読んだところ、新たな発見があったので、覚書として記事にしました。
加計学園問題シリーズの過去のブログ記事で、加計学園と京都産業大学のケースは異なることを説明してきましたが、初めてこの記事を開いた方のために最初に過去の説明を簡単にまとめておきます。既に理解している方は、1を飛ばして『2.京都は事前に無理だと言うことを文科省から聞かされていた』をお読み下さい。
1.なぜ加計学園は獣医学部新設を認可されて京都産業大学は認可されなかったのか
加計学園問題シリーズの過去のブログ記事で、加計学園と京都産業大学のケースは異なることを説明してきました。簡単にまとめると、
- 愛媛県と今治市が獣医学部新設のための大学誘致を目的として、国家戦略特区の提案を行い、それが認められた。
加計学園はその構成要員(獣医学部を設置する大学)として指定された。
- 京都府と京都産業大学は京都府内に獣医学部新設を提案した。(平成28年〔2016年〕10月17日に国家戦略特区ワーキンググループでヒアリングを受けるも、それ以上の進展はない。)
という、別個の申請で、2016年(平成28年)1月29日に今治市が国家戦略特区に指定されたあとの2016年(平成28年)3月24日にノコノコと概要を1枚紙(←WG委員八田氏の表現)で提案してきたのです。(第8回関西圏区域会議)単純に、京都は出遅れ、二匹目のドジョウを狙ったのです。
しかし、国家戦略特区WGは京都を落とすつもりはありませんでした。
京都の場合は、「国家戦略特別区域法 第二十六条」の“広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り...”に阻まれました。→【追記】この時点では新潟、京都、愛媛(今治市)が対象で、その後の“平成30年開学の学部1つ限り”という条件には阻まれました。(但し、31年度以降の開学を目指せば良かったのです。)
この条件を入れたのは日本獣医師会の強い働きかけによるものです。平たく言えば、今治市の国家戦略特区認定により、1校の新設はしかたがないか、2校目はなんとしても阻止したいという要求が通ったのです。
京都産業大学を不可にするような条件を組み込んだ経緯は議事録等がないので、明かではありません。→【追記】その後、日本獣医師会の蔵内会長が獣医師会からの要請で1校だけにして欲しいと山本大臣に頼みました。(→『【獣医学部新設問題】獣医師会と獣医師連名が仲間割れ?蔵内会長が山本地方創生相の発言を裏付け』)
“広域的に~”云々の部分も、内閣府側と獣医師会の意を汲んだ有力議員との間の“妥協”の産物です。獣医師会の会長短針などを読むと、相当の働きかけをしたようなので。
正論を言うなら、“(京都の提案内容に問題がないのなら)京都にも許可を出してやれ”、となるのですが、野党は敢えて“加計学園と京都産業大学の一騎打ちになったようにミスリードさせ、首相のご意向で加計学園を勝たせた”というストーリーを描いて、政争の具としているだけなのでしょう。
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2.京都は事前に無理だと言うことを文科省から聞かされていた
ブログ主の中では、既に1のように結論づけていたので、これ以上京都府と京都産業大学の件は深く調べていなかったのですが、2016年(平成28年)10月17日のヒアリング議事録を読んで、興味深い事実を知りました。
議事録が提示されているのは、平成28年度の提案に関するヒアリングのページ(サイト)です。(開催日10月17日の部分)
これは、国家戦略特区ワーキンググループで、提案者をワーキンググループ委員が提案内容についてヒアリングを行ったものです。出席者は下記の通り。これ以外に内閣府から事務局が出席しています。
<WG委員>
- 座長 八田 達夫 アジア成長研究所所長
- 大阪大学社会経済研究所招聘教授
- 委員 阿曽沼 元博 医療法人社団滉志会瀬田クリニックグループ代表
- 委員 本間 正義 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
- 委員 八代 尚宏 昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授
<提案者>
- 中村 繁男 京都府農林水産部副部長
- 大西 辰彦 京都産業大学副学長
- 大槻 公一 京都産業大学教授
- 上村 浩一 京都府農林水産部畜産課長
- 中路 幾雄 京都府商工労働観光部特区・イノベーション課担当課長
問題の箇所は、下記の部分です。該当の発言をピックアップします。
P5
○本間委員
御説明いただいたところは全て納得といいますか、私もライフサイエンスの学部におりますので、御主張は全面的に賛同いたすところです。なおかつ、医者と違って獣医師に関しては総量規制をすることは全く必要ないと思っていまして、特区指定のある今治のほうでの提案もあって、文科省等々、相当いろんな議論を詰めてというか、すれ違いが多いのですけれども、やっているところであります。
まず、このプランは文科省に設置の申請といいますか、文科省との話し合いはどの程度されて、どういう回答をもらっているのか、そのあたりをお聞かせいただければと思います。
P6
○大西副学長 御説明の中にもあったのですけれども、我が方としましては、2010年に総合生命科学部を開設いたしまして、11名の獣医師の先生をお招きしております。そういった取り組みのもとで、文部科学省への事前協議ということでお話をさせてもらっておりますが、今、門戸は開かれていないということで、文科省としては具体的な協議を進めることはできないということで、何回かにわたってお願いをしておりますけれども、そのところではねつけられてしまっているというのが現状でございます。
P.8
○八田座長 非常に説得的なお話をどうもありがとうございました。
あと、ほかに御意見ございませんか。
私から一つだけ御質問します。設置審に要請されようとしたら、事前協議が必要だと言われ、事前協議では、これは無理ですよと言われたということですが、その無理だという根拠は何だったのですか。
○大西副学長 説明不足だったですけれども、正式に設置申請に向けての事前調整ということではなくて、いわゆるもう活動はされている状況でございますので、何とかそこを御配慮いただきたいという、事前の事前相談みたいなところがあったのですが、なかなか農水省を含めて、獣医師は充足しているという論法の中で、これ以上獣医学部をつくる必要はないんだというお話で終わってしまっているという状況になっているということです。
○八田座長 ということは、設置審にかけてもうまくいきませんよと。
○大西副学長 そういう手続きさえも今はとれませんよと。
○八田座長 手続きもやっていない。
○藤原審議官 医学部同様、告示で規制されていますから、設置審の議論にまで入れない状況にあるということだと思います。
○八田座長 かなり不透明性が高い。根拠が不明確ですね。
議事録からの抜粋は以上です。
説明は不要かと思いますが、これを読むと、京都産業大学が事前に文科省に非公式に(=事前の事前)相談したら、1984年の公示を盾に獣医学部新設なんて申請しても無駄と一蹴されていたようです。
この事前の相談とは、
http://www.pref.kyoto.jp/seisakuteian/documents/280608_32.pdf
の2ページ目の「京都府・京都産業大学の取組」にある、
○ 平成27年12月2日に、大阪府を除く5府県の知事連名の「京都産業大学の獣医学部設置に関する要請書」を文部科学省、農林水産省、厚生労働省に持参し、協力を要請
のことのようです。
設置審とは?
上で『設置審』という言葉が出てきますが、正式には『大学設置・学校法人審議会』のことで、例えば、今治市と加計学園(大学は岡山理科大学)のケースで言うと、現時点では今治市の国家戦略特区・構成要員として選ばれた段階で、最終的に認可されるのは大学設置・学校法人審議会の審査を経る必要があります。
記憶に新しいのは、2014年に「幸福の科学大学」の申請を、“宗教法人「幸福の科学」創立者の「霊言」を根拠とした必修科目を設けるなどの計画を掲げたが、答申は「科目内容に科学的根拠が欠如している。学問の要件を満たしていない」と指摘”して認めなかったことがあります。
大学・学部新設の審査の流れ
5月26日付読売新聞記事『前次官 異例の批判会見』の中で『文科省「忖度 余地なし」』との見出しで説明があります。
これによると、
一般に学部新設の場合、
- 【3月末】設置の約1年前の3月末に学校法人が文科相に申請
- 【4月】文科相が大学設置・学校法人審議会に諮問
- 【4~5月】外部の専門家が委員を務める「専門委員会」などが審査(非公開)
- 教員や学生の確保
- 施設の整備
- 教育課程の編成 などをチェック
- 【5月末】意見を学校法人に伝達
- 【6月】学校法人が意見に基づき、申請を修正
- 【7月】「専門委員会」が2度目の書類審査
- 【8月】審議会が文科相に結果を答申
- 【8月末】文科相が認可・不認可を判断
という流れだそうです。
その後、様々な事実を時系列に並べることによって、真実が見えてきました。詳しくは次項の記事をお読み下さい。
5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯
この問題は日本獣医学会の動きと併せて時系列で見ないと正しい経緯が見えてきません。
『【加計学園問題】5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯』にまとめました。是非こちらの記事もお読み下さい。
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