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2017/06/03

【加計学園問題】獣医学部新設の是非に反論できなかった文科省の無能ぶり【今治市に関するヒアリング】

前川前事務次官のインタビュー記事を読むと、圧力に押し切られたと言うのみで、今治市の国家戦略特区が相応しくないと考えるなら、どのように反論したのか一切の説明がありません。

マスコミも、“圧力があった”と書かれたメモやそれを前川氏の言う上層部で共有した証拠(?)のメールを、「あった、あった」と大喜びで報道するだけで、国家戦略特区に認定されたプロセスやその妥当性を一向に検証する気配がありません。

実際のやりとりは2015年6月8日と9月16日のワーキンググループでのヒヤリングを読めば分かり、これで、文科省が今治市の国家戦略特区を阻止するだけの能力があったのかどうか、容易に判断できます。

 

 

 

 

平成27年6月8日 国家戦略特区ワーキンググループヒアリング議事録

平成27年(2015年)6月8日(月)の国家戦略特区ワーキンググループにおいて、農水省、文科省に対するヒアリング議事録です。

 

●ヒアリング当時の状況

念のため、この2015年6月8日という時期を時系列で見てみると(参考:『【加計学園問題】5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯』)

 

2015年6月30日に閣議決定の「日本再興戦略」改訂2015

2015年(平成27年)12月15日 国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区3次指定が決定。

 

の前ということになります。

「日本再興戦略」改訂2015というのは例の『石破4条件』(リンク先はブログ記事『石破4条件とはなにか?』)が書かれているものです。

つまり、このヒアリング時期は日本獣医学会が獣医学部新設を食い止めようと奔走していた時期で、

“石破担当大臣と相談をした結果,最終的に,「既存の大学・学部で対応が困難な場合」という文言を入れていただきました。”

【引用:日本獣医師会 平成27 年度全国獣医師会事務・事業推進会議の開催 〔平成27年(2015年)7月10日〕 http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06809/a2.pdf P.546】

にも表れており、既に石破4条件が盛り込まれた文書は完成していたでしょう。

 

獣医師会の立場に立てば、1校(1学部)も新設できないような厳しい条件をつけてもらうことは成功したので、あとは、これを盾に文科省が今治市の提案を突っぱねてくれれば良かったわけです。

 

●ヒアリング議事録

該当のヒアリング議事録は、http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/hearing_teian.htmlで閲覧することが来ます。(首相官邸トップ>会議等一覧>地方創生推進事務局>国家戦略特区ワーキンググループ>平成27年度)→文科省・農水省へのヒアリング(議事要旨 228KB)

 

Kake27


たかだか11ページ程度の議事録なので、全文を読んでみることをおすすめしますが、出席者と議論の流れを提示しておきます。

 

  • 開催日: 2015年 平成27年6月8日(月)18:34~19:12
     
  • 議事:  国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)

で、出席者はヒアリングをする側として、有識者からなるワーキンググループ委員(WG委員)と事務局(内閣府地方創生推進室)です。

  • <WG委員>
    • 委員 原 英史 株式会社政策工房代表取締役社長
    • 委員 本間 正義 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
    • 委員 八代 尚宏 国際基督教大学教養学部客員教授
    • 昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授
       
  • <事務局>
    • 富屋 誠一郎 内閣府地方創生推進室長代理
    • 藤原 豊 内閣府地方創生推進室次長
    • 宇野 善昌 内閣府地方創生推進室参事官
    • 富田 育稔 内閣府地方創生推進室参事官

ヒアリングされる側は、文科省2名、農水省3名です。

  • <関係省庁>
    • 北山  浩士文部科学省高等教育局専門教育課長
    • 牧野 美穂 文部科学省高等教育局専門教育課長補佐 ←【追記】怪文書を書いた人物
    • 藁田 純 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長
    • 大石 明子 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長補佐
    • 國分 玲子 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長補佐

 

これを読むと、

  1. WG委員: 今治市が主張している国際水準ないしは新しいタイプの獣医学教育は、これまでの獣医学教育とはかなり違い、現在の獣医学の教育体制ではカバーし切れないと認識。(P.3)
     
  2. 文科省(北山): (既存のカリキュラムを列挙して)カバーできている。(P.3~4)
     
  3. WG委員: 獣医師の量的な確保はどうなっているのか?。(P.4)
     
  4. 農水省(藁田): 「これまでもやっているし、今後もしっかり対応したい」。(P.6)
     
  5. WG委員: (現在、大学・学部新設の規制が為されているのは獣医以外では歯科医師と船舶職員、医学部と確認し、新しい大学を認める際に卒業生の就職先があるかどうかは関係ないという文科省の言質を取った上で) 
    何が問題で新規参入を規制しているのか?それは告示なのか?(ブログ主註: この「告示」については1984年(昭和59年)に文部省(当時)が獣医学部新設を認めない方針を決定したことと思われる。)
     
  6. 文科省(北山): 告示に従っている。 
     
  7. WG委員: (法律ではないと確認した上で、) 
    「小泉内閣のとき、そういう需給調整条項というのは一般的には廃止されるというはずだったのではないか。つまり、なぜかというと、どんな需要があるかというのは役所が判断するものではなくて市場が判断して、もし就職口が見つからなかったら、それは本人の責任」であり、量的にコントロールする必要があるか?
     
  8. 農水省(藁田): 獣医師国家試験は一定のレベルを超えていれば合格としているので、量的なコントロールはしていない。(P.7)
     
  9. WG委員: (農水省の回答を受け、司法試験で合格者数を制限している弁護士と異なり)、なぜ学部(の数や入学者数)で調整しなければいけないのか?(ブログ主註:司法試験は合格者数を一定に保っている。そのため、受験者が増えれば、合格率は下がる。)
     
  10. 文科省(北山): 毎年輩出される獣医師数というのが増えてくることについては農林水産省さんにお伺いしたい。
     
  11. 農水省(藁田): 需給の現状についてデータに基づいて話せるが、国家試験について一定のレベルをクリアしたものが合格になるだけ。
     
  12. WG委員: となれば、農水省にはこれ以上伺うことはない。獣医学部の段階で規制するという文科省さんの理由をもう一回おっしゃってください。(P.7~8)
     
  13. 文科省(北山): 無制限に養成するということが質の確保の観点から望ましくない。また、卒業生の卒業と密接不可分であるので、獣医師の各分野における社会需給の見通しというのを踏まえている。(P.8)(ブログ主註:合格者数が増えたら就職できない学生が出てくるという意味。5と矛盾。)
     
  14. WG委員: 質の管理は農水省さんがやっていること。たとえ無制限に獣医師が増えたとしても、それはそれだけの知識と技術を持っている人たちがふえるというだけであって、何ら国民にとって害のある話ではない。
     
  15. 文科省(北山): 農水省さんのほうでのお考え、獣医師数がどうであるかということについてのことかと思う。法科大学院の問題のように、学生にとって、目的としていた職業につけないという可能性が高くなってくるということの影響を考える必要がある。
     
  16. WG委員: ロースクールの合格率が悪いということは、国民に何の被害も与えていない。就職試験に失敗する学生がたくさんいるのと全く同じ話であって、それを文科省が心配される話ではない。
     
  17. WG委員: 「結局、既存の団体の権限を守るものとしか我々は理解できないわけです。どこだってギルドの団体というのは競争者がふえないほうがいいから、それを所管官庁が反映して行動されているとかみなせないわけです。」(P.9)
     
  18. WG委員: 新しい分野は全部やっているのは個々にずっとお話しされたが、文科省さんから愛媛県さんには正確には何をしてほしいのか?
     
  19. 文科省(北山): ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要というのを明らかにしてほしいと伝えている。(P.9~10)
     
  20. WG委員: 個別の分野について、それぞれ人数規模としてはどれぐらいになっているのか?(P.10)
     
  21. 文科省(北山): 定員ベースで930人毎年いるということことだけで、それぞれの分野を専攻している人が何人いるかということについては、情報を持ち合わせてない。
     
  22. WG委員: 新しい分野のニーズというのを共有した上で、その具体的なプログラムを要求しているのかと思ったら、文科省さんのお考えとしては新しい分野などは存在しないだろうとお考えか?
     
  23. 文科省(牧野) そこまでは言っていないが、既存の獣医師養成の分野に関しては少なくとも今足りているというように農水省さんから聞いているので、その上で関係者も納得するような、これは新しい構想だというようなものを具体的な需要の数までも示した上でお示しいただければ。
     
  24. WG委員〔原委員〕: 「挙証責任がひっくり返っている。」(ブログ主註:「挙証(きょしょう)」…証拠をあげること)
     
    〔八代委員〕「それは文科省にとってリスクがあるわけですね。需給の必要性ということについて全部農水省に丸投げしておいて、もし訴えられたりしたらどうなるのか。」
     
  25. WG委員: 
    • 新しい分野へのというところに行く以前に、そもそも告示についての見直しが必要ではないか
    • 、新しい分野の対応というところについては、本当にそのニーズが満たされているのか。
    • それぞれの項目について、今、どういう対応をしているか、獣医師の何人がその分野に当たっているかというようなことを示していただかないと、十分足りているということにはならない。
       
  26. WG委員: 「そういう根本的な議論が残っている状態なので、そこはまた引き続きやらせていただく必要がある。」

 

ここまで、 議事録に沿って、重要だと思われる発言の要旨をピックアップしました。

これを読んだブログ主の感想としては、既存のカリキュラムでは新しいニーズをカバーしていると主張するも、文科省は1984年の公示を盾にするだけで、現状、学生が各分野にどのような配分で学んでいるのかは説明できず、また今後のニーズも農水省や愛媛県に示して欲しいと丸投げをしているだけで、独自の論では、なんら新学部不要の説明をできていません。

議事録の最終ページ(P.11)で事務局(内閣府)の藤原次長が、「構造特区のほうでも、まさに特区の入り口でございましたが、先ほど申し上げたように全国的見地ということなのかもしれません。そういった御提案を頂戴している中で、これも最終的には総理が本部長であります構造改革特区本部のほうで対応方針として決定しますので、(後略)」と発言しています。

事務局やワーキンググループ委員を納得するだけの意見が言えずに抵抗しているだけでは、“上”(内閣府)から押し切られてもしかたがなかったのではないでしょうか。そして、文科省内で体面を保つために使った苦し紛れの言葉が“(総理の)ご意向”なのでは?と想像します。

 

平成27年9月16日 国家戦略特区ワーキンググループヒアリング議事録

2016年(平成28年)9月16日の国家戦略特区ワーキンググループにおいて、農水省、文科省に対するヒアリング議事録です。(→議事録) 全6ページ

 

●ヒアリング当時の状況

このヒアリング議事録を時系列で見てみると(参考:『【加計学園問題】5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯』)、下のようになります。(赤字

  • 2016年(平成28年)1月 国が今治市を国家戦略特区に認める。
     
  • 2016年(平成28年)9月16日 国家戦略特区ワーキンググループにて農水省、文科省をヒアリング。
     
  • 2016年(平成28年)11月9日 今治市などの申請で獣医学部新設が特区の規制改革メニューに認められる。

なお、このヒアリング直後の9月21日には国家戦略特別区域会議の今治市分科会・第1回会議が行われており、オブザーバーとして、文科省、農水省からの出席者がいます。(文科省は浅野氏) リンク先に議事録があります。

ちなみに2回目(平成29年1月12日)は下記の、“広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする”が決まった後です。

  • 2017年(平成29年)1月4日 「平成27年内閣府・文部科学省告示第1号」改訂(公布・施行)

この2回目の分科会にオブザーバーとして文科省から出席したのは常盤氏(文部科学省高等教育局長)

 
●ヒアリング

この時の出席者(ヒアリングを受ける側)は下記の通り。

  • 浅野 敦行 文部科学省高等教育局専門教育課長
  • 辻 直人 文部科学省高等教育局専門教育課長補佐
  • 磯貝 保 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長
  • 大石 明子 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長補佐

詳しく発言をピックアップはしませんが、文科省(発言者は浅野氏)の発言内容を見ると、例の“石破4条件”を挙げて、これを満たしているかどうか、卒業後の就職先(「ただ、獣医学部を出た卒業生は、獣医師国家試験の受験資格が与えられますので、当然そこの需給の問題というのはかかわってくる。」)というくらいで、WG委員から、悉くやり込められているように感じます。

 

 

 

 


 

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コメント

ブログ主様

ありがとうございます。また新たな論点など出てきましたら、質問させて頂くこともあるかと思いますが引き続き宜しくお願いいたします。

メディア注意報様

貴サイト、拝見致しました。
>一度ご覧頂いた上でOKであれば教えて頂けますと幸いです。
了解致しました。リンクを貼って下さって結構です。

当方の記事が活発な議論と真実を伝える一助になれば幸いです。

ブログ主様

さっそくコメント頂きありがとうございます。

1. ご意見ありがとうございます。各ソースを網羅されていて感心してしまいます。私も読んで見ようと思います。

2. リンク転載可とのこと、ありがとうございます。
記載を考えているのはNewspicksというメディアになります。http://newspicks.com/about/
主に経済を中心に色々なニュースについて様々な方がコメントし、中には"プロピッカー"と呼ばれる著名人も見解を出しています。この中で影響力があるいくつかの方も事実に基づかない、野党、マスコミの歪曲した情報、見方を垂れ流しており少しでも変わればと自身で把握したことを基にコメントしています。(加計の記事はいくつもありますが例えばhttps://newspicks.com/news/2289069/)
ここでソースを基に整理されているブログ主様のサイトをご紹介し少しでも事実に基づいた議論にできればと思った次第です。一度ご覧頂いた上でOKであれば教えて頂けますと幸いです。

再度になりますがいくつもまとめられている記事本当にありがたいです。私も森友から今回のことを契機に、色々このままでは非常にまずいと危機感を覚えています。野党の無意味さはもちろんですが、メディア特にテレビの偏向ぶり(昔からですが)を強く再確認しており何か行動を起こさないとと感じています。


メディア注意報様

コメント、ありがとうございました。
1.についてですが、
>2015年度以降の検討や決定に対して何かの縛りをかけるものでも無い
当方もそう思います。
まず、日本再興戦略は2013(平成25年)から毎年出されていて、今後(短~中期的取り組む政策を示したものですが、獣医学部新設の件は年度内と決めていたのだと思います。(期限をそう定めていただけ)

2016年(平成28年)9月16日の国家戦略特区ワーキンググループ(農水省、文科省のヒアリング)内で、冒頭、藤原審議官が、「本年度中に検討ということなので少し時期をもう越えておるのですが、関係省庁とともに政府として宿題を負った形になっている」と発言しています。
本年度(2015年度)とは2016年3月末で、そのため、“少し時期をもう超えている”(9月)という表現になっているのでしょうし、期限を越えたからと言って時間切れにはしていません。

2.についてはご自由にお使い下さい。(同窓会ブログとは言っていますが、幹事である管理人が連絡用に作った個人ブログです。)
できれば、貴サイトのURLを教えて頂ければ嬉しいです。当方にとっても参考になるかと思いますので。
このコメント欄自体はURLは貼れないのですが、コメント欄の上にある「アドレス(URL)」なら記入できます。

以上がお問い合わせに対する回答です。

以下は自分の覚書も兼ねていますが、たまたま6月5日の、

『これでいいのか「報道特集」!加計問題であまりに偏っていたその「中身」』出演者にも確認してみたところ…(現代ビジネス)

を読んだところ、筆者の高橋洋一氏が、この記事と同じこと(農水省・文科省)の2回のヒアリングの検証)をしています。
後ほど本文に追記しようと思っていますが、URLを貼りましたので、ご興味がありましたらご一読下さい。(「アドレス(URL)」にURLを記入すると、投稿者の名前にリンクが貼られます。)
 
なお、当方も、(野党、特に民進、共産はいつもこんなものですが、)今国会の異常さに驚きというよりも、レベルの低さに悲しくなっています。

森友問題は、まあ分かりやすかったのですが、加計問題は言いがかりとは思いつつも経緯を知らずにいきなり持ち出してきたので、何のことかさっぱり分からず、調べている内にいつの間にかいくつもの記事を書いてしまいました。

ブログ主様、

大師小とは全く自身は関係無いのですが、加計問題の本質を知りたく調べているうちに辿り着きました。いつも一次情報を基に、整理・分析されておりとても分かりやすく参考にさせて頂いております。なんら問題の無い本件で国会が空転している状況が早く終わればと切に願っています。

ブログ主様にいくつかお聞きしたいのですが、

1. 石破4条件について、これに違反するのではとする玉木議員に具体的根拠がないことは承知しているのですが、そもそも4条件では最後に条件が満たされれば「本年度内(=2015年度)に検討を行う」とあります。これは2015年度以降の検討や決定に対して何かの縛りをかけるものでも無いと思うのですが、この考えは筋違いでしょうか?

2. こちらのサイトのリンクを他サイトでご紹介させて頂く事は可能でしょうか?もともと同期の方々が集まる事が主旨とお見受けしているのですが、非常にわかりやすいので共有できればと思いお伺いしています。

以上長々とすみません。

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