【加計学園問題】平成29年1月4日文部科学省告示の「一校限り」は効力はないのでは?
本題に入る前に、今日付け(2017/06/28)の日経新聞も読売新聞も、24日の安倍首相の神戸市での講演の中で「獣医学部新設の全国展開を目指す」と発言したことに対する動きを報じていたので、そのことを記しておきます。
首相の「獣医学部新設の全国展開」発言の反応
日経の見出しは『獣医学部「京産大も対象」 加計問題で内閣府 野党、矛盾と追及』、読売は『「獣医学部 全国に」波紋 首相「加計ありき」払拭 民進は猛反発「疑惑隠し」』といった見出しです。
ほぼ見出しから内容は想像できると思いますが、要するに「一校限り」としたのに、二校目、三校目も作ると言うのは矛盾しているというのが民進党の主張で、日経新聞も、山本地方創生相の言葉を引用して、“27日の記者会見では「具体的な追加の提案があれば、前向きに検討したい」と述べ、これまでのスタンスを微妙に修正した。”としています。
ブログ主はこれに先んじて、初めてちゃんと「平成二九年一月四日内閣府・文部科学省告示第一号」を読んだのですが、それで、あることに気づきました。
2017年1月4日の告示
下は、転記したものです。
○文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件(平成二十七年内閣府・文部科学省告示第一号)
一部改正平成二九年一月四日内閣府・文部科学省告示第一号
国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第二十六条の規定に基づき、文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件を次のように定める。
文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件
(1.は医学部新設についてなので省略)
2.法第七条の国家戦略特別区域会議が、法第八条第二項第二号に規定する特定事業として、平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置(法第二条第一項に規定する国家戦略特別区域における獣医師の養成に係る大学の設置をいい、「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」(平成二十八年十一月九日国家戦略特別区域諮問会議決定)に従い、一校に限り学校教育法第四条第一項の認可を申請されるものに限る。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日以後は、当該大学の設置に係る同項の認可の申請の審査に関しては、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定は、適用しない。
ここで問題になるのは2項の部分ですが、括弧に注意してみてください。括弧は2重になっています。
2.法第七条の国家戦略特別区域会議が、法第八条第二項第二号に規定する特定事業として、平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置(法第二条第一項に規定する国家戦略特別区域における獣医師の養成に係る大学の設置をいい、「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」(平成二十八年十一月九日国家戦略特別区域諮問会議決定)に従い、一校に限り学校教育法第四条第一項の認可を申請されるものに限る。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日以後は、当該大学の設置に係る同項の認可の申請の審査に関しては、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定は、適用しない。
「一校に限り」という部分は括弧書きの中に入っています。
この文章は、他の告示や諮問会議の決定事項を読まないと分からないという、構造が2重3重になっていて分かりにくいものなのですが、括弧内は「平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置」を説明するものに過ぎないのです。
主語に当たる「平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置」とは今治市に設置される獣医学部なので、今後の獣医学部新設に一般化して書かれたものではなく、これに限定した公示です。
述語に当たる「大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定は、適用しない。」の『大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定』の部分は、「歯科医師、獣医師及び船舶職員の学校は定員増も新設も不可」ということを言っているので、述語部分は、「この規則の適用外=作ってもいい」という意味です。
簡単に言えば、この公示は「一校限り」ということを言いたいのではなく、「今治市には新設する獣医学部は一条第四号の適用外」と言ってるので、2校目、3校目を作る時は、同様に「平成○○年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置は~」と、新たな公示を出す含みのある巧妙な公示なのではないかと思います。
もちろん、その場合は諮問会議を経るなど、国家戦略特区法に則って正式な手続きを踏む必要がありますが。
【2017/07/01追記】ブログ主はこれを読み解くのに二時間ほど時間が掛かったのですが、深夜にやっていた『朝まで生テレビ!』で高橋洋一氏が一言で説明してしまいいました。orz 「いま出してる告示っていうのは、平成30年度に1校って言っているだけなんですよ。だからね、31年度以降はいくらでも(獣医学部を作れるんですよ。←この部分は誰かが遮った。)
もう少し詳しい説明というか、資料はwebページ(※)『「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限る」→「1校限り」補足資料』の後半に書きました。
また、一度は「広域的~」で省庁間では合意ができていたものを「1校限り」とせざるを得なくなった経緯は2017/08/01に公開された動画の中で原ワーキンググループ委員が暴露しています。(→『【加計学園問題】文科省も「加計1校にしてくれ」と頼んでいた !? 【原WG委員が暴露】』)
※webページとはこのブログシステムの機能で、日付の付いたブログ記事とは別に作れるページです。言わばサブページのようなもの。←【2017/06/30追記】すみません。リンクを貼り忘れていたので、後からリンクを貼りました。リンク先は、この公示に係る審議会の決定や『大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定』などを提示したものです。
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コメント
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奥穂3190さま
ご連絡、ありがとうございました。
とりあえず、このコメントには横網次郎さんのブログ(29・6・18)と行き来しやすいようにリンクを貼っておきます。後ほどじっくりと拝読させて頂きます。
投稿: 大師小ブログ主 | 2017/07/02 11:29
横網次郎さんのブログ(29・6・18)に、貴見につきコメント致しました。ご覧頂ければ幸甚。
投稿: 奥穂3190 | 2017/07/02 11:10
>八田民間議員たちも新潟と京都は獣医学部設置できる余地を残した
朝生で、高橋氏は更に、官僚の感覚では“広域的”というのは市町村レベルの範囲とも言っていました。
京都産業大学と京都府が提案していた綾部市は(地理に疎くて知らなかったのですが)、京都府でも日本海側に近いので、大坂ににある獣医学部とは十分別の地域と言えるとのことでした。
投稿: 大師小ブログ主 | 2017/07/01 19:09
saboさん、コメントありがとうございました。
そうなんです。本当に、“(日本に)一校限り”なら、括弧書きではなく、“地”の部分に書くはずですよね。
括弧内は、今回設置が決まった今治の獣医学部は、“審議会で、これこれこういう理由で決まった”という説明書きに過ぎないと思うのです。
ですから、第二、第三の獣医学部新設が提案されたら、それはその審議会であらためて新設の必要性や意義を検討されるはずなんです。
実は、6月26日のWG委員の会見を観る前に書いた記事なのですが、その後観たところ、2校目、3校目を作っていく気満々ですよね。
投稿: 大師小ブログ主 | 2017/06/30 05:56
確かにカッコは平成三十年にかかってるわけでそれ以降の開校は可能と読み取れる、と言いますかそうするために用意されたカッコ書きにしか思えません
八田民間議員たちも新潟と京都は獣医学部設置できる余地を残したと言っていたし、交渉の上勝ち取ったカッコだったのでしょうね
もしくは逆にカッコ内は無しで作られた起案に対して既得権益勢力がカッコ内の文言を強引に入れたか
投稿: sabo | 2017/06/30 00:11