【加計学園問題】京都産業大学の獣医学部新設を阻んだのは日本獣医師会
この記事はブログ主が頭の中を整理するためとソース(出典等)をメモするために書いており、加筆修正していく可能性があります。
掲題のことは、日本獣医師会のHPで誇らしげに会長が書いていることです。
2016年(平成28年)11月18日~12年17日に、新たに獣医学部の設置を可能とするよう、国家戦略特別区域法第二十六条の修正を行うにあたり、パブリックコメントを募集していますが、この修正案の中に“現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする”旨の文言があります。更に、2017年(平成29年)1月4日に告示・施行された『平成27年内閣府・文部科学省告示第1号(PDF形式:68KB)』では一校限りという文言があり、これで加計学園以外を除外したと喧伝していますが、この告示の解釈がそもそも間違っています。
別記事で詳しく解説していますが、この告示は「平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置は、これを抑制しない。」 という内容で、「一校限り」はあくまでも、「平成30年開学の大学」について言っているだけなのです。
テレビ朝日等のマスコミは1校の枠を巡って京都産業大学と加計学園が争い、この文言を入れて、加計学園だけが新設できるようにした、という誤ったアナウンスをしていますが、以前の記事で見たように、
- 2016年1月 愛媛県今治市が国家戦略特区の指定を受けた。(この時点で、今治市には1校の枠ができた。国家戦略特別区域会議の構成員=進出する大学の公募自体はオープン。)
- 2016年3月24日 京都府と京都産業大学が“獣医学部の新設の抑制解除”を求め提案。同年10月17日、国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングを受ける。(設置場所は京都府)
と、加計学園と京都産業大学が1校の枠を争ったわけではありません。
この後、経緯を見ていきますが、日本医師会会長の、
- 2015年(平成27年)12月18日短信では(今治市が国家戦略特区の指定を事前に知って)、これを契機に次々と認可されることはなんとしても阻止しなくてはならない、と発言。
- そして、2016年(平成28年)11月9日に国家戦略特別区域法第二十六条の修正が決定され、修正案についてパブリックコメントを募集。
- 2017年(平成29年)1月30日の短信に、この間奔走し、何とか「1校に限り」に修正できた、と発言(この間とは、修正案を作成する間という意味。)
しているので、修正案に、2校目の新設がなされないような条件を盛り込むよう、働きかけを行ったことになります。
京都府と京都産業大学が獣医学部の新設を断念したのは、加計学園を“勝たせる”ためではなく、今治市に次いで2校目を作らせないという日本獣医師会の執念が実ったわけです。
経緯
まずは、ソースとして、日本獣医師会の会長短信を挙げておきます。
- 会長短信「春夏秋冬(29)」 「驚きのニュース」(2015/12/18 平成27年12月18日)
- 会長短信「春夏秋冬(40)」 「“One Health”国際会議の成功を歓び、禍根を残す無責任な特区決定に憤りを」(2016/11/22 平成28年11月22日)
- 会長短信「春夏秋冬(42)」 「獣医学部新設の検証なき矛盾だらけの決定に怒り」(2017/01/30 平成29年1月30日)
これらを読んでいくと、時系列と関係者の名前が分かります。
時系列まとめ
読みやすいように書き直しました。(赤字は2017/07/02追記)
2015(H27)/06/30 「日本再興戦略」改訂2015」閣議決定(No.29)…所謂「石破4条件が明記されている。(→『石破4条件とは何か?』
2015(H27)/12/02 大阪府を除く5府県の知事連名の「京都産業大学の獣医学部設置に関する要請書」を文部科学省、農林水産省、厚生労働省に持参し、協力を要請。
2015(H27)/12/15 今治市を国家戦略特区3次指定に決定…最終的な決定は2016年1月
2015(H27)/12/18 (短信No.29 )
- 12月15日(火)の昼、耳を疑うような驚きのニュースが飛び込んできました。 午前中に開催された国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区3次指定が決定されました。 全国16の獣医学系大学、日本獣医学会、日本獣医師政治連盟、本会等が揃って長年にわたり設置に反対してきた獣医師養成系大学・学部の新設案件です。
- このような情報は、先週、北村政連委員長(ブログ主註:元自民党北村直人 日獣政連委員長)のご尽力により入手はしていましたが、事実か否か疑う余地もありました。
- そして更に注意を要することは、本件を契機として次々と設置申請が認可されることは、何としても阻止しなければなりません。
2016(H28)/03 京都府と京都産業大学が京都府内に獣医学部新設を目的に、“獣医学部の新設の抑制解除”を求め、国家戦略特区を提案。 …この辺りで、文科省に事前にお伺いを立てたらしい。(→10/17のワーキンググループでのヒアリング参照)
2016(H28)/09/07 酒井副会長、北村顧問が(2校目はなんとしても阻止すべく?)山本地方創生相に談判にいく。
2016(H28)/10/17 京都府と京都産業大学が国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングを受ける。…この会議の中で、文科省に事前にお伺いを立てたが門前払いを喰らったとWG委員にこぼしている。(→該当記事)京都はこれ以降の進展はなし。
2016(H28)/11/09 国家戦略特区諮問会議で「国家戦略特別区域法第二十六条」の修正案を決定。…獣医師会の抵抗を感じて「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限る」という条件を山本大臣が入れる。
2016(H28)/11/22 (短信No.40 )
11月9日、国家戦略特区諮問会議が開催され、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。」ことが決定されました。
2016(H28)/11/18~12/17 国家戦略特別区域法第二十六条の修正について、内閣府がパブリックコメント募集(※)
2016(H28)/11/22 (短信No.40 )
- 早くも18日には、国家戦略特区による内閣総理大臣の認定を受けた獣医学部の設置については、文部科学省告示による大学設置認可基準の適用外とする内閣府のパブリックコメント募集が開始されました。
2017/11/28 日本獣医師会会長 藏内勇夫氏の名前で地方獣医師会会長宛にパブリックコメントに反対の意見を出すよう指示。(「論理的かつ決然たる反論を是非とも提出していただくよう何卒よろしくお願いいたします。」→過去の記事参照)
2017(H29)/01/30 (短信No.42 )
- この意見募集に対しては、皆様方から多数の怒りのコメントを提出いただき、総数976件の意見のうち83%が反対意見という結果でした。
- この間、私や日本獣医師政治連盟の北村委員長を始めとした本会の役職員は、できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方に、本会の考え方にご理解をいただくよう奔走いたしました。 このような皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました。
以下は上記サイトに提示されている「概要」PDFより趣旨等を転載。
文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件の一部を改正する件(案)
先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置
- 人獣共通感染症を始め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するため、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。
これに対し、11月28日付で獣医師会会長より地方獣医師会会長宛に「論理的かつ決然たる反論を是非とも提出していただくよう何卒よろしくお願いいたします。」と通達。(過去の記事参照)
【追記】→結果概要(PDF/リンク先は今治市サイトに転載されたもの。オリジナルは電子政府のパブリックコメント検索サイトより検索できる。)
5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯
この問題はもう少し過去に遡って、日本獣医学会の動きと併せて時系列で見ないと正しい経緯が見えてきません。
『【加計学園問題】5分で分かる“真実の”加計学園を巡る経緯』にまとめました。是非こちらの記事もお読み下さい。
【追記】京都産業大学は文科省から事前に門前払いされていた
新たに、京都府と京都産業大学が受けた、国家戦略特区ワーキンググループでのヒアリング議事録を読んで分かったことですが、修正履歴(2017/07/02)にも書いたように、京都側は平成27年(2015年)12月2に文科省に事前のお伺いを立てています。しかし文科省は非協力的だったようで、その様子がヒアリング議事録に見て取れます。詳しくは、ブログ記事『【加計学園問題】京都産業大学は文科省から事前に門前払いされていた【2016年10月18日ヒアリング議事録】』をお読み下さい。
【追記-修正履歴】
■2017/07/02 コメント欄にて京都府と京都産業大学の動きに関する貴重な情報を頂戴したので、その内容を加味して修正しました。
上記資料の2ページ目に、下記の記述があります。
============================コピペ開始
◎ 京都府・京都産業大学の取組
○ 平成27年12月2日に、大阪府を除く5府県の知事連名の「京都産業大学の獣医学部設置に関する要請書」を文部科学省、農林水産省、厚生労働省に持参し、協力を要請
○ 京都府獣医師会からは、「理解し、協力する」旨の文書受領済み
○ 製薬企業では専門性の高い獣医師に対するニーズと期待度が高く、実験動物学の教育が充実すれば、国内の製薬業界の国際的なシェア拡大が期待できるとの意見
============================コピペ終了
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コメント
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横綱次郎様
コメントの一部が当方の設定しているNGワードに掛かってしまい、非表示になってしまっていました。大変申し訳ありません。
貴重な情報をありがとうございました。
後ほど訂正しておきます。
投稿: 大師小ブログ主 | 2017/07/02 12:32
興味本位で加計学園問題をネットで調べていくうちに、このブログにたどり着きました。
いや~よく調べておられます。感心させられました。
マスコミはこういった事を伝えず、さも疑惑があるかの様な報道をたれながしています。
さらにひどいのは民進党などの野党。貴重な国会の時間をただ内閣支持率を下げるため
だけに浪費し、国民を欺いている。
投稿: よそもの | 2017/06/16 12:19
細かい部分で恐縮ですが、京都産業大学が最初に動いたのは2015年12月のようです。
http://www.pref.kyoto.jp/seisakuteian/documents/280608_32.pdf
『平成27年12月2日に、大阪府を除く5府県の知事連名の「京都産業大学の獣医学部設置に関する要請書」を文部科学省、農林水産省、厚生労働省に持参し、協力を要請』
初めてサイトを拝見したのですが、よく調べられていて大変勉強させていただきました。
ありがとうございます、また是非拝読させてください。
投稿: 横網次郎 | 2017/06/14 13:32