熊本地震:Amazonの欲しいものリストを利用して避難所となっている学校が緊急性のない物資や学校備品を調達?-譜面台、一眼レフ、ビデオカメラ、他-【まとめ】
この記事は2016/04/23に公開しましたが、時間が経つにつれて見えてきたものがあり、必要に応じて加筆・修正することにします。
- “被災者支援”にかこつけた物資の調達
- 不備の多いAmazonの特設サイト
- 熊本地震:避難所を装って総額600万ほどの文房具を購入させた学校をNHKが擁護!?
1.“被災者支援”にかこつけた物資の調達
NHKのニュースで、Amazonの特設サイトに避難所となっている場所が「欲しいものリスト」を公開することにより、篤志家が購入してくれるというシステムで必要な物資を調達できるというのを知りました。(web記事→『アマゾンが地震支援物資の特設サイト』 動画あり 4月22日 16時01分→リンク切れ/キャプチャはこちら )
アマゾンが地震支援物資の特設サイト 動画を再生する ネット通販大手のアマゾンは一連の地震を受け、現地のニーズに合わせた支援物資を届けようと、通販サイトの利用者が、避難所ごとに公開された必要な物資のリストを参考にして購入した商品を直接、現地に配送する取り組みを始めました。
下は上記サイトにあるニュース映像のキャプチャで、龍田小学校の校長先生が欲しいものリストを前に説明しています。
しかし、チラッと映ったリストに違和感を覚えたので、その後、Amazonの特設サイトを見てみると、龍田小以外にも龍田中学校など、いくつかのアカウントが登録されていましたが、その中で、龍田中学校の欲しいものリストが突出して要求している商品が多いのです。
下は上の画面のリストを下にスクロールしてアップにしたところですが、液体ハンドソープのボトルを300個希望し、この時点で既に193個購入されています。
(ニュース記事と共に動画が消えてしまったので念のため書きますが、上のキャプチャの校長先生は龍田小学校、リストが異常なのは中学校で、2枚目の画像は中学校の欲しいものリストです。1-2.にもまとめて掲示していますが、龍田中学校欲しいものリストp.2「tasudachu20160422-002.jpg」と比較しすれば分かります。)
1-1.より巧妙な龍田小学校の欲しいものリスト
但し、中学校のリストがほぼ完売状態で終了すると小学校のリストへの追加が始まりました。連絡を取り合っているか、同じ人間によって管理されているのでしょう。アカウントとパスワードさえ知っていれば、一箇所からでも更新できるのですから。
しかも、小学校のリストのほうは、中学校のような大量の希望数は目立つからか、少ない数での要求→入手(ここでリストから消える)→再び要求を繰り返すという、より巧妙な手口に進化しています。
必要数購入して貰えるとリストから消える仕組みになっているので、合計いくつ要求しているのか分かりません。
こちらも被災者が使うものではなく、リコーダー、鍵盤付きハーモニカ、タンバリンやノート、糊、絵本等でした。
小学校も中学校も音楽関係の品のリクエストが多いのも何かを示しているようです。
下は小学校のほしいものリストのほんの一部です。すぐに消えてしまうのであまりキャプチャは撮れませんでしたが、保健室で使うには不自然な黒い寝具セットなど、なぜこれを避難所として必要なのか疑問を持ちます。
- 「tatsudasyo01.jpg」(龍田小リストキャプチャ)
- 「tatsudasyo02.jpg」(龍田小リストキャプチャ)
しかも、前述のNHKの記事を再び読み返してみると、小学校の校長は以下のように述べており、文房具の調達を把握していたことが明らかです。果たして、龍田小学校の生徒で、文房具を失うほどの被害を受けた生徒がどれほどいたのでしょうか?また、文房具くらい自分で買えないのでしょうか?
学校では来月の連休明けの授業の再開を目指していますが、今後、児童が使うノートなど文房具が必要になるとして、このサイトを通じて支援を呼びかけています。
1-2.緊急性に欠け、量も異常な龍田中学校のほしいものリスト
龍田中学の場合は、緊急性に疑問を感じるものが数多くありました。
例えば、吹奏楽部が使う譜面台数60台とかメトロノーム50台、さらに、スケッチブックの希望数が700冊とか、硬度が12種類揃った鉛筆セットが700セット、価格が高いコンパス700個、消しゴム7,000個(10個入り×700パック)、キャンパスノート6,000冊(5冊パック×1400)とか...(下はそのリストの最初の方です。PDFで保存して5ページくらいになったのを画像に変換しました。)文房具だけで数百万円の額になります。
- 龍田中学校欲しいものリストp.1「tasudachu20160422-001.jpg」
- 龍田中学校欲しいものリストp.2「tasudachu20160422-002.jpg」
- 龍田中学校欲しいものリストp.3「tasudachu20160422-003.jpg」
- 龍田中学校欲しいものリストp.4「tasudachu20160422-004.jpg」
- 龍田中学校欲しいものリストp.5「tasudachu20160422-005.jpg」
シャープの液晶テレビが6台も必要なのかというのは疑問を感じ得ませんが、PTAのFacebookでは高齢な被災者の情報収集のためと説明されています。(この記事内にキャプチャ画像あり)
メトロノームや譜面台は地震で全滅したからとの説明がありますが、たとえそうでも、“避難所の被災者のため”と謳っている以上、便乗して新調しようとしているのか?とも思えます。
しばらく見ていると、善意の人が購入してあげるのか、希望数に対して「所有」(購入数)がどんどん増えていき、さらに要求する物品がエスカレート。
下はネットで拾った画像の一部ですが、一眼レフカメラ2台やビデオカメラ3台、アンプ、トランシーバーなど、次から次へと追加されては、購入して貰ったのか取り消したのか、消えていきました。(なお、発送前にキャンセルされるとリストに復活するようで、25日になって再びトランシーバーがリストに表示されました。)
1-3.疑惑を更に深めた龍田中PTAのFacebook
これらはPTAが要求しているようです。(PTA Facebookより)
「テレビなどの高価なものをほしいものリストに上げましたがまさかご支援頂けるとは思いませんでした。」
「ほしいものリストには学校再開を見据えての子どもたちへのデジタルカメラ、デジタルビデオなどの高価な支援物資も入っています。あくまでほしいものというだけですので、ご支援頂けるか頂けないかは購入して頂けるみなさまにお任せするしかありません。
ご承知おきの上、ご支援よろしくお願いします。」
この文章に違和感を覚えるのはブログ主だけでしょうか。
篤志家が買ってあげているのだから、他人がとやかく言うことはできないのかも知れませんが、少なくともこれらの物資を運ぶために、物流の手がそがれ、本当に必需品を渇望している避難所との格差が広がります。
こういうのは「焼け太り」と言うのではないでしょうか?
また、この特設サイトはあくまでも「たすけあおうNippon」というサイトで、“被災者”の支援を趣旨としています。“学校が避難場所になっている=学校が被災した”とは限りません。そこで学校で使うもの、PTAや子ども達の部活のための備品を要求するのはいかがなものかと思います。
しかも、生徒数540名(龍田中学校サイトより)の学校で全校生徒数より多い700単位の高級文具とは、なんの目的があるのでしょうか。
切実に困っている被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
【追記】その後の経緯
2016/04/23 16時頃: これらの要求リストはPTAが主体でやっていたことだとFacebookで発言。(但し、龍田中学のPTA会長と一緒に笑顔で荷物を受け取っている龍田小校長の画像がFBで公開されていました。現在は削除済み/画面キャプチャは保存済み)
「Amazonの仕組みでほしいものということでしたので入(い)る入(い)らないは別にしてリスト化した次第です。」 うーん、いらないものまで要求したのですね。
2016/04/24: PTAのFacebook削除
龍田小 本村真也校長、龍田中 芦原陸雄校長 龍田中PTA会長 清水康孝
2.不備の多いAmazonの特設サイト
ブログ主は寡聞にも今回初めて「ほしいものリスト」を利用して援助物資を送ったり・受け取ったりできることを知りました。
ただ、「ほしいものリスト」自体は知っていて、Amazonに限らず、ネット通販のサイトでは、購入(よく「買い物カゴに入れる」という表現をします)する前に、他の商品と比較するために一時的に“お気に入り”のような意味で商品を登録したり、今すぐ必要ではないけれど、ついでがあったら買おうというものを登録したりできる機能があり、Amazonではそれが「ほしいものリスト」という名前になっています。
このリストはデフォルト(規定値)では非公開ですが、公開することもできます。だから、誰でも「ほしいものリスト」は作ることができるのです。
一方、今回、問題になっている小学校や中学校の「ほしいものリスト」はそれとは少し違います。
まず、Amazonのトップページの下の方にある「たすけあおうNippon」というロゴをクリックすると、現在は即、下のような熊本地方の震災の名の下に登録された被災地(避難場所)が表示されますが、ここに表示してもらうにはAmazonのサポート(ここでは営業マンのような意味)に個人的に連絡を取り、サポート(これはサービスのような意味)してもらわないと登録してもらえないのです。
ヘルプ(説明のページ)もなく、ツテがない避難所にはどうしていいか分からないでしょう。(問題の中学校ではPTA会長が担当者を知っていたと言うことで、スムースに登録できたようです。)
だから、ここに登録されていなくても、検索すれば、例えば下のような「ほしいものリスト」も見つかります。
タイトルには「【被災地】熊本県南阿蘇村立南阿蘇西小学さんのほしい物リスト」と書いてあります。並んでいる物は安価な石けんや日用品で、思わず買ってあげたくもなりますが、前述のように、誰でも作れる「ほしいものリスト」なので、実際にこの場所の被災者が作ったリストかどうかは判断できません。
このリストが本当に避難場所のものであったら失礼ですが、切実な物なら、いつ希望数に満ちるか分からない物資を待つだろうか?という疑問が浮かびます。
また、送付先もはっきりしません。例えば、送付先(住所、代表者氏名、電話番号)が明記されており、必ずそこに送られるという確証があれば別ですが。被災地であるとの証明ができるよう、そういった情報を“公開する”という機能があればまだよいのですが。
調べてみたところ、実際、東日本大震災にかこつけた詐欺のような「ほしいものリスト」も数多くあったようです。
実際に他の避難所の名前で作られたリストでは単にほしい物を書き連ねたようなリストになっています。(下図/【被災地】熊本市中央区黒髪校区)
そして、そもそも論として、Amazon(実際は宅配業者)が個別に配達できるなら、ある程度の復旧はなされていて、国や自治体からの支援物資も届いていいはずでし、苦労して商品をかき集めて店を再開した商店の妨げにもなります。
確かに、今回の震災では、耐震化を施していた「指定避難所」が破損して使えなかったり、各避難所の人数確認が遅れたりして、一部の避難所を除いては運ぶルートは確立できているのに適切に物資を配分できないのが大きな問題ですが、一(いち)私企業のシステムを過信するのは問題があると思います。
Amazonには本当に困窮している避難所かどうかを判断する能力はありません。(もちろん、そんなことは期待していません。)たとえ“たかり”であっても避難所の名を使ってリストに登録すれば、Amazonで買い物してくれるのですから当然でしょう。
購入された商品の履歴を公表していないので、各アカウント(避難所)が総額どのくらいの商品を受け取ったのかも分からないし、配送先住所も非公開にできる仕様になっています。
なお、問題の避難所は物資を直接配送させるのではなく、佐賀にあるAmazonの配送センター留めにして、そこからは地元の配送業者に運ばせるようにしていたそうです。穿った見方をすれば、この方法なら、学校ではなく、一部は個人の自宅、一部は買い取り業者などに流れても知っているのは当事者のみ、ということも可能です。
Amazonのシステムについては別の記事『【熊本地震】龍田の件で露呈したAmazonの震災便乗ビジネス』にも補足記事を書いています。
3.熊本地震:避難所を装って総額600万ほどの文房具を購入させた学校をNHKが擁護!?
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