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2016/04/29

【熊本地震】龍田の件で露呈したAmazonの震災便乗ビジネス

今回の一連の騒動(熊本市の龍田小学校と中学校が“被災者支援のため”と称して総額数百万円-文房具だけでも600万円以上-の”欲しいもの”を善意の支援者に購入させた問題)で露呈したのは、Amazonの偽善的な”震災便乗ビジネス”です。

過去の記事でも書きましたが、Amazonの言う“被災者と支援者をつなぐ物資支援のサポート”とは、Amazonの機能の一つ、『アマゾンギフト』というシステムをそのまま災害時の“欲しいもの”と“支援したいもの”をマッチングさせるシステムに利用したものです。

 

アマゾンギフトとは

『アマゾンギフト』とは、欧米などで一般的に行われている、結婚祝いなどに贈り先(A:結婚する人)の欲しい物をリスト(=「ほしいものリスト」/ウィッシュリスト)にしてもらい、友人など(B)が買ってあげるという習慣に適する機能で、Aが欲しいものをリストアップして公開します。それを友人が分担してプレゼントしてあげるというものです。(下図参照)

 

Amazon_gift01

 

何らかの理由で、Aが受け取ったものを返品した場合、Aには商品相当額のギフト券が贈られます。購入した人に返金されるわけではありません。(※)

 

※Amazon公式ヘルプ: ギフトを返品・交換する

ギフトの受取人による返品の場合、受取人にはAmazonギフト券で返金します。Amazonギフト券は、返品受付センターにアクセスする際に使用されたアカウントのEメールにお送りします。

 

Amazonギフト券とは紙の商品券ではなく、メールアドレス宛にコードが通知され、これをAmazonでの買い物の際に指定するとポイント化ウェブマネー化し、支払いに充当できる、という使い方をします。

また、本来このような使い方をするシステムなので、「ほしいものリスト」には贈り先の住所や氏名などは公開する必要はありません。友人には、そのリストのURLをメールなどで連絡すればいいわけです。

今回は、A(避難所)、B(善意の支援者)という構図です。

ここまでで分かるのは、Amazonにはどうあっても売上が上がる仕組みです。しかも全く身銭を切ることがなく。

なお、この「ほしいものリスト」は非公開にすれば、自分が購入を検討している商品を登録しておいたりして、一時的な覚え書きに使えます。

 

通常の「ほしいものリスト」とAmazonがお墨付きを与えた「ほしいものリスト」

前述のように「ほしいものリスト」は誰でも作成でき、自分のアカウント(ID)に対して複数のリストを作ることも可能です。

従って、リスト名を「【被災者】○○○」などと称することも可能です。

一方、このリストにAmazonがお墨付きを与えたものがあります。今回の龍田小学校避難所や龍田中学校避難所がそれで、これはAmazonのトップページにある「たすけあおうNippon」というバナーをクリックすると表示される一覧に掲載されます。(これを「公式のほしいものリスト」と呼ぶことにします。)

しかし、ここに掲載して貰うには、Amazonの担当者に直接連絡してそのサポートを受ける必要があり、Amazonが荷物を配送できる程度の被災地でないとなりません。つまり、交通網が遮断されているような本当に困っている避難所は対象外なのです。

お墨付きを貰えなかった避難所は単なる「ほしいものリスト」として公開するしかありません。(ここでは「非公式のほしいものリスト」と呼ぶことにします。)

「非公式のほしいものリスト」はその他有象無象の「ほしいものリスト」と一緒に存在するだけで、目立たず、また、避難所を騙(かた)っているほしいものリストとの見分けも付きません。

Amazonは「ほしいものリスト」の運用についてはこう語っています。

 

Amazon、被災地「ほしい物リスト」運営の実態は 「本当に必要?」疑問の声も』(Infoseekニュース/ソース:ITmedia/2016年4月26日 12時55分

(前略)アマゾンジャパンによると、SNS上で「龍田中学校(熊本市)の物資が足りていない」との発言を見かけた同社スタッフが同校の校長に連絡し、第1弾としてリスト作成に至った。避難所の担当者に「ほしい物リスト」の使用方法を電話でレクチャーした。  

(中略)同社は、あくまで各避難所のリストを専用ページに集約しているだけで、どのような物資をリストに登録するかは、避難所の現地判断に任せているという。  基本的に被災地の判断には“不干渉”だが、リストの悪用を防ぐために「本当に必要な物資を登録すること」「理由を明記すること」などを推奨。現地に同社のスタッフも派遣し、直接アドバイスも行っている。ただ、一般ユーザーのリストと同じく、動向をトラッキングはしていないため、「どんな物品がどれくらい届けられているかは把握していない」(同社)という。(後略)

jpg: ITmedia_20160426_1.jpg

 

つまり、ほぼ野放し状態です。

このシステムに関しては、東日本大震災の時にも悪用する者が現れており、今回も当初より避難所の運営者の不安視する声がありました。

 

熊本地震  活用されず、アマゾンの「ほしい物リスト」』(毎日新聞 2016年4月23日 14時05分(最終更新 4月23日 15時35分))

熊本市の避難所名義で掲載されたリストには、老眼鏡▽トイレットペーパー▽簡易トイレ▽オムツなどが公開された。
しかし、避難所の運営者はリストの存在そのものを知らなかった。しかもリストの商品は十分確保できていた。

避難所を運営する男性(56)は「行政の力が行き届かないところを埋めてくれるサービスは非常にありがたいが、善意で支援してくれる人に間違った情報が伝われば、元も子もない。悪用されていなければいいが……」と困惑する。

 

なお、ITmediaの記事中の「同社スタッフが同校の校長に連絡し、第1弾としてリスト作成に至った。」のスタッフとは、Amazon Japanの渉外本部長/渡辺弘美 Watanabe Hiroyoshi氏で、これは小学校のアカウントを作成する際のTwitterのやりとりから明らかになっています。 実際に指導したのは部下だとは思いますが。

 

今回も、熊本市の黒髪という地名の避難所を名乗る非公式のほしいものリストに、自転車や仏壇といった、避難所生活に必要でないものが手当たり次第に掲載されていました。しかし、これが本当に黒髪の方が作成していたリストかどうかは分かりません。

また、そのリストで購入された商品の履歴が一切公開されていないため、今回の龍田小学校のリストのように、リストからすぐ消えるように、すぐに購入数が希望数に達するような少ない希望数でのリクエストを何度も行われても、全く分かりません。

こういった行為は詐欺と言ってもいいでしょう。Amazonは被災者支援と称する活動をするなら、システム改善を行うべきで、それができないのなら、被災者支援を騙るのはやめるべきです。

既に徳島県はAmazonと大規模災害発生時の支援協定を結んでいます。利益が優先の一企業、民間の運送会社を過信するのは危険ではないでしょうか。地元の商店が早期に店を再開しても、PCやスマホの前でポチポチすればタダで商品が届くのですから、地元経済の復興の妨げにもなるでしょう。

このシステムが使われるような災害が起こらないことを願います。

 

災害時に避難所の「ほしい物リスト」公開へ Amazon、徳島県と協定』 2014年09月05日 19時54分 更新

アマゾンジャパンと徳島県は9月5日、大規模災害発生時の支援協定を結んだと発表した。災害時に必要な物資を、県内の避難所ごとにAmazon.co.jpの「ほしい物リスト」で公開。Amazonユーザーに周知し、有志のユーザーに購入してもらうことで、必要な物資を避難所に届けられるようにする。

 

大量の文房具リクエストを把握しながらもなおAmazonへの提灯記事を書いたNHK

これは、前回の記事『熊本地震:避難所を装って総額600万ほどの文房具を購入させた学校をNHKが擁護!?』に書きましたが、最初の取材で既に龍田中学校が大量の文房具をリストに掲載しているのをニュースで流し、その後ネットで“炎上”しているかを知っているかのような、文房具の購入を正当化するような記事を4月26日に掲載しています。

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