【ブログ主覚書】2017年度消費増税:インボイス方式の問題点とは?【軽減税率/ヨーロッパの付加価値税】
2017年4月の消費増税(8%→10%)に伴い、軽減税率の導入(8%)か、還付制度の導入(一旦10%の消費税を支払い、後に2%相当分〔上限あり〕を申告の上還付)かで迷走しています。
先日まで、財務省案(還付制度)が俎上に載せられ議論していましたが、反対が多く、9月15日の国会で、再び軽減税率も含めて再検討することに決定したとの報道がありました。
また、18日付の報道では、公明党がインボイス(後述)を簡易化したものを使用する軽減税率案を提出するとのことで、争点はインボイス方式となっているようです。
ただ、報道内容を見ていると、インボイス方式の導入がどのようにネックなのか分かりづらい気がします。
最終的にどのように決着するかはまだ分かりませんが、ここまでの報道を元に情報を整理しておくことにします。(この記事は加筆修正する可能性があります。)
なお、ヨーロッパの消費税制は「付加価値税」と呼ばれていますが、商品や原材料を加工したもの、サービスといった有形無形の"商品”の付加価値に着目して課税するもので、名称が複数税率や申告の制度を表すものではないので、この記事では「消費税」と表現する場合もあります。
なぜインボイス方式の導入が争点になるのか?
まず、インボイス(invoice)とは、辞書を引くと「送り状,、納品書、明細請求書、インボイス」などとありますが、ここでは「請求書」が適当で、これは日本でも帳簿に記帳する際の根拠・証拠となるもので、書式については説明しなくても誰もが想像できるとは思いますが、左に図を掲載しました。
ヨーロッパの場合、記載を義務づけられている項目がやや多く、複数税率があることが前提なので、商品毎の税率や税額、請求書番号、それと、「課税取引業者」として割り振られた「事業者番号」を記載しなければなりません。
読売新聞などは、左の図を提示し、大した違いはないというような説明をしたり、近々、公明党から提示される案では、税率は明記せずに印をつけたものにするという内容で、まるで書式を変更するのが大変という印象を受けます。
でも、このような報道だけでは本質は見えてきません。
上の図の下方に、「1 請求の番号、事業者番号を記載」(←インボイス方式)だと「業者や請求書を特定しやすい」と書いてありますが、これが問題(と言うか、小規模企業からの反発)があります。
問題は消費税に係る取引の透明化
消費税は、最終的に負担するのは消費者ですが、納税は、小売業者や中間業者が一旦預かって、仕入れ時に支払った消費税を控除して(差し引いて)代わりに納税します。
例えば、(消費税10%とすると、)Aという会社からBが110円(税抜き100円)で商品を仕入れ、諸経費や利益を上乗せして220円(200円)で売ったとすると、Bは「借り受け消費税」-「仮払い消費税」、つまり、20円-10円=10円を納税、Aは同様に借り受け消費税10円から仮払い消費税を差し引いて...というように二重に課税されることなく、納税するのが原則です。
実際の計算は、1ヵ月などの一定期間で帳簿の「借り受け消費税」と「仮払い消費税」にそれぞれ集計しておき、納税額を計算します。
しかし、このようにして厳密な数字で納税されているかというとそうではなく、例えば免税事業者(年間1,000万円以下の売上)は納税を免除されていたり、簡易課税制度といって売上に係る消費税から80%(業種によって異なる)をみなし仕入れ率として計算して良いという制度もあります。
簡易課税制度のみなし仕入れ率は単一の消費税率を前提にしており、複数税率が導入されればこのような方法では対応できなくなり見直しが必要です。
免税事業者に関しては、(ヨーロッパのインボイス方式を採用すると)問題があるのは以下の点でしょう。
ヨーロッパでは企業の付加価値税(日本の消費税にあたる税)の申告の基準はインボイスですが、課税事業者(事業者番号を持つ業者)しかインボイスは発行できないため、免税事業者から仕入れると、仕入れに係る消費税は控除できません。従って、仕入れ先として免税業者が排除される恐れがあります。
誤解を与えないように追記しておくと、免税事業者が商品に消費税を賦課しても問題はありません。納税を免除されているということは仕入れの消費税も控除できないということです。
フランスでは、付加価値税の導入の際、当初中小企業には簡易的な制度が適用されたが、上記理由でインボイス方式への切り替えが進んだとのことです。(9月17日付読売新聞)
ここまで見たことで言えるのは、
軽減税率(複数税率)を導入するということは、請求書の書式(税額を明記するとか、印をつけるとか)という小手先の話ではなく、適切な税収を得るために申告の根拠を厳格化し透明性を高める必要が出てくる。
その手段として、ヨーロッパ型に近いインボイス方式の導入が不可欠。
ということです。
従って、傘下の企業が異なる経済団体でも軽減税率(インボイス方式)の導入の是非についは温度差があり、中小企業中心の日商が最も強行に反対しているそうです。(9月17日付読売新聞)
インボイス方式の導入により企業の経理業務が煩雑になるということは事実で、ヨーロッパの場合は、取引先の事業者番号毎の税額リストなど、国毎に異なる書類の提出が義務づけられていますが、事業者番号により管理されているので、電子申請の導入など、簡略化が推進されているそうです。
これを、当初の財務省案では、(中小)企業には配慮したが(あるいは、面倒な部分に手を付けるのを避け?)、消費者にはマイナンバーカードでの還付申請などという負担を強いたもので、支持を得られなかったのは当然だと思います。
これ以外に、軽減税率、還付方式にかかわらず、税額の軽減対象品目の範囲の問題もありますが、これはまた別の機会に考えてみたいと思います。
関連記事:消費税と軽減税率 ヨーロッパの実情
上記記事にリンクを貼った国税庁のサイトの「食料品等に対する軽減税率の導入問題」(リンク先にPDFで全文あり)は大変詳しく説明があります。
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