【ブログ主覚書】ハロウィンになぜカボチャのランタンを飾るの?/『ハロウィーンの文化誌』【書籍】
10月31日のハロウィンもすっかり日本に定着したのか、街はカボチャのランタンやお化けのモチーフで飾られ、雑貨店などでもハロウィングッズが売られています。
でも、なぜ、カボチャのランタン(Jack O'Lantern/ジャック・オ・ランタン)を飾るのでしょうか。
この答えは後述することにして、そもそもハロウィンとは、ということから考えていくことにします。
ブログ主はドイツ語を学んでいたこともあり、ヨーロッパの文化や伝承の本も何冊か読んでいますが、そこにはハロウィンの記述はありません。
なぜなら、ハロウィンの風習はアメリカで作られた、キリスト教とは関係ないイベントだからです。
簡単に言えば、ケルトの民間伝承が起源と言えないこともありませんが、収穫祭などともごっちゃになり、アメリカで魔改造されて商業主義に乗ったイベントです。
ハロウィンの起源
ハロウィンの起源は、ケルト民族のサムハイム祭(Samhain/但し、原語に近い発音は「サウィン」)という祭りと言われています。ケルト暦では11月1日が1年の始まりで、冬の始まりと新年を祝うものだったそうです。そして、古い暦の年末から新年にかけての数日間、あるいは冬至の頃(十二夜)は死者が生まれた家に帰ってくると信じられていました。
ケルト(Celt)と聞くと、現代ではイギリスの一部(ウェールズやスコットランド、アイルランド)の文化のように思われる恐れがありますが、5世紀頃までヨー ロッパ大陸に広く居住していたヨーロッパの先住民で、言葉や様々な文化の起源となっており、ヨーロッパの古い文化と言えます。
しかし、キリスト教が布教されたことで、こうした古い信仰はキリスト教に同化させられたり行事を移動させられたりして、11月1日は万聖節(ばんせいせつ/=諸聖人の祝日/All Saints’ Day、All Hallows、Hallowmas)という、キリスト教の諸聖人を記念する祝祭となり、その翌日の11月2日は万霊節(ばんれいせつ/=諸死者の記念日/=All Souls' Day)という聖人以外の死者の記念日となりました。
したがって、ヨーロッパでは、教会に行ったり、先祖の墓参りをする、日本のお盆かお彼岸のような日となっています。祖先の霊が迷わないように火を灯したり、身体を温められるよう竈(かまど)の火を燃やし続ける風習も一部にはあるそうです。
ハロウィン(Halloween)とは、元々この「諸聖人の祝日の前夜祭」(=All Hallows' eve)が、言葉だけでなく内容も変化したものです。1930年代頃までは綴りもeveの省略形と分かる「Hallowe'en」でしたが、40年代には「Halloween」が一般的になったそうです。
ヨーロッパでは、民間信仰がキリスト教の教義に閉じ込められても、土着の風習は様々に形を変えて生きながらえます。
この記事のタイトルにある『ハロウィーンの文化誌』という本にはこうした例がたくさん挙げられているのですが、やや散漫で、まとめられているとは言いがたいものです。多分、言いたいことは、ヨーロッパに古くから伝わるイメージ、すなわち「死者」や「炎」、「収穫祭」、その他の民間伝承のエッセンス、古くから残る風習をアメリカで再構築して、更に商業的な色づけをしたイベントということだと思います。(日本では見かけませんが、「収穫」に関係ある「かかし」もハロウィンのモチーフの一つだそうです。)
この本のレビューは後半にあらためて書きます。
カボチャのランタンの起源
さて、本題のカボチャのランタンの起源ですが、アイルランドの民間伝承が大きく影響しているそうです。
『ハロウィーンの文化誌』という本は日本人向けに書かれているわけではないので、この伝承は「悪魔の裏をかいた鍛冶屋ジャック」という簡単な説明で片付けられているため、この物語をネットで調べて読んでみました。
簡単にご紹介すると、このような物語です。
昔々あるところに、けちで飲んだくれの鍛冶屋ジャックがいて、あるAll Hallows' eveの日に酒場で飲んだくれていると、ジャックの前に悪魔が現れ、「お前の魂をもらいに来た。」と言います。
ジャックは、魂をやるけど、その前に酒を一杯飲みたいから金に化けてくれと悪魔を騙し、悪魔が6ペンスコインに化けると、財布の中にしまってしまい ます。財布の中には銀の十字架があったため、悪魔は封印されてしまいますが、二度とジャックの前に現れないことを約束させて悪魔を逃がしてやります。
ジャックは一度は更正しようとするのですが、再び堕落した生活に戻ってしまい、翌年のAll Hallows' eveに再び悪魔が現れます。するとジャックは、魂をやる前にリンゴを食べたいと言って、悪魔をリンゴの木に登らせ、そのすきに、幹にナイフで十字を刻み、降りてこられないようにしてしまいます。
この時も悪魔を逃がしてやるのですが、1年後、ジャックは死んでしまいます。
しかし、生前の行いが悪かったジャックの魂は天国には入れて貰えず、地獄に行こうとしますが、ここでも悪魔に拒まれてしまいます。
元来た道を帰るのに明かりが欲しいとジャックが泣きながら言うと、悪魔は真っ赤に焼けた石炭を投げてやります。(←意外と優しいじゃん by ブログ主)
ジャックはそれまで食べていて中が空ろになった蕪(カブ)の中にその石炭を入れ、最後の審判(Judgment Day)の日まで、蕪のランタンを持ちながら、天国にも地獄へも行けず、さまよい続けます。
このことから、蕪のランタンがAll Hallows' eveのシンボルとなりました。
なるほど。(^ω^)
って、カボチャじゃないんかい!ヽ(`Д´)ノ ウワァァン!!
上の物語が書いてあったサイトでは、この伝承をアメリカにもたらしたのはジャガイモ飢饉(the Potato Famine/1845-1850)に移民としてやってきたアイルランド人で、蕪より簡単に手に入るカボチャで代用したのだという説明でしたが、この本(『ハロウィーンの文化誌』)では、 それよりも数十年前に、カボチャのランタンや気味の悪い顔が彫られたカボチャは既にアメリカではポピュラーだったと書かれています。
例えば、ワシントン・アーヴィング(Washington Irving/1783~1859)の小説『スリーピー・ホロー(The Legend of Sleepy Hollow)』(1820)で、この小説は直接ハロウィンとは関係ないのですが、首なしの騎士とともにカボチャのランタンが登場するそうです。
このように、ハロウィンの風習は様々な伝承や物語がミックスされてイメージづけられたものです。
なお、Jack-o'-lanternを英和辞典で引くと、「カボチャのランタン、お化けカボチャ」の他に、「鬼火、煉獄(Purgatory)」、「セント・エルモの火(St.Elmo's fire)」とありました。「o'」は「of」の略です。
「煉獄」とはカソリックの教義で、「生きているうちに犯した罪のつぐないをしないで死んだ人の霊魂が贖罪(シヨクザイ)を果たすまで、火によって苦しみを受ける場所」、その「火」のことだそうです。
また、「セント・エルモの火(St.Elmo's fire)」は怪奇現象ではなく、気象現象で、船のマストや尖塔、山頂などに現れる薄青い炎状の光のことだそうです。
『ハロウィーンの文化誌』
新聞の書評欄で面白そうな本を見つけたので注文してみました。原題は“Trick or Treat: - A History of Halloween -”(著者:Lisa Morton/訳者:大久保康子/原書房)です。
この本はアメリカのライターによって書かれたもので、前半の起源や歴史に関する記述は先に述べたように、散漫で、ヨーロッパに伝わる“ハロウィン的”習慣を書き並べたに過ぎず、全体的に消化不良の感じがします。
また、(これはしかたがありませんが)想定する読者にとって常識的なことでも、日本人には説明不足な部分も多いです。(訳者註のようなものがあればいいのですが。)
中盤から後半にかけては、世界に逆輸出されたハロウィン、つまり、ヨーロッパのみならず日本を含む東洋で普及しているハロウィンの紹介や、ハロウィンが登場する映画や音楽、製菓会社や玩具会社が送り出した商品、テーマカラーについて起こった議論といったサブカル的、あるいはポップカルチャー(大衆文化)的な現象の紹介です。
これも、テーマ毎に整理するとか、時系列に分けてまとめたりされていれば読みやすいのですが、様々な事象が取り上げられているので、情報量は多いです。
この本によると、日本でハロウィンが広まるきっかけになったのは、1983年に表参道(原宿)の企業(キディランドらしいですね→【追記】参照)によるハロウィンパレードだそうです。
最近、アメリカでは、庭にハロウィンの飾り付けをすることが流行ってきているようです。そのうちに日本でもやり出すんじゃないかな?
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【追記】
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