【ブログ主覚書】土砂災害、その背景にあるもの-進まぬ土砂災害警戒区域指定
広島北部の豪雨により引き起こされた未曾有の土砂災害被害、日を追う毎に行方不明者が増え、暗澹たる気持ちになります。
四方を海に囲まれ、山地が多く、世界でも有数の地震国、台風の影響と、日本人は、ある意味、自然災害はしかたがないものと思っているところがありますが、今回のような土砂災害が、単に“自然の驚異”で済まされるものではない、という記事を朝刊で読んだので、覚え書きとして記事にしておきます。
上は、その中にあった図で、これだけ見てもわかりづらいのですが、地形や地質などから『土砂災害危険箇所』と認識されている地域が、実際に『土砂災害警戒区域』や『特別警戒区域』に指定されているかどうかを都道府県別に示した地図です。
つまり、危険と認識されているにも関わらず、自治体による警戒区域の指定が遅れている場所を抱える都道府県ほど色が薄くなっています。
『土砂災害警戒区域』や『特別警戒区域』に指定されていれば、住民への危険性の周知が義務づけられ、その場所に宅地を建てる場合の基準が厳しくなる、自治体によって「移転勧告」が可能になるなどの様々な手が打てるのだそうです。
この地図で、例えば北海道は20%未満となっていますが、実際は12%だそうです。(→『北海道内の「警戒区域」指定進まず 土砂災害、危険箇所の12%』〔08/22 06:25配信北海道新聞記事〕)
今回の事故があった広島は薄いグレー(20%~40%)になっていますが、朝刊記事によると37%とのことでした。
では、何故、警戒区域の指定が進まない自治体があるのでしょうか。
『土砂災害警戒区域』や『特別警戒区域』に指定する手順ですが、まず、都道府県が、国の基準に基づき、地形図などから、『土砂災害危険箇所』を選定します。
それを、地形や地質、利用状況から、『土砂災害警戒区域』や『特別警戒区域』に指定する作業になるのですが、例えば、30度以上の勾配がある急傾斜地や渓流の下流といった危険な地域は『土砂災害警戒区域』、特に危険の高い場所は『特別警戒区域』となります。(神奈川県の「土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定基準」に分かりやすいイラストが掲載されています。)
しかし、実際に指定を行う際には住民説明会を行って理解を得るといった手続きを踏まなくてはならず、住民の反対が多いのも遅れの一旦であると、記事は説明しています。つまり、こういった区域に指定されてしまうと、所有している土地の資産価値が下がったり、土地の利用方法に規制がかかるのを嫌がることも少なくないのだそうです。指定を受けると、家屋を建築する際に、山側の壁を厚くしたりといった建築基準が厳しくなるそうです。
見方を変えれば、指定された土地で業者が宅地開発する場合は、崖の補強工事を行うといったことが必要になり、新たにその場所の土地を購入する住民にはメリットがあるわけですが。
また、調査などの作業そのものにかけられる予算が不足しているという点も指摘されています。ただ、地図を素人目で見ても、遅れている県は危険箇所の数そのものが多そうで、単純な財政不足や行政の怠慢と見なすことはできないと思います。
ちなみに、この法制定のきっかけになったのは、1999年6月の、広島を襲い、死者/行方不明者32人を出した豪雨災害とのことです。
広島県は県の面積の7割が山地で、先に述べた危険箇所は全国最多の31,987箇所に上るとのこと。今回の被災地区も大半が危険箇所ですが、実際に警戒区域に指定されていたのは、安佐北区可部東地区だけだったそうです。
関東平野の海側という平らな場所に住んでいて、山や渓流などといったものが一切周囲にない(但し、津波の危険性がありますが...)場所に住んでいるブログ主は、今回の被災地の映像や画像を見て、正直、どうしてあんな(背後に急斜面の迫る、いかにも危険そうな)土地に住める(=宅地として許可された)のだろう?と疑問に思いました。
警戒区域の指定が進んでいれば、補強工事が事前に行われていた、あるいは、住宅地として選ばなかったことで、もしかしたら被害がここまで広がらなかったのでは...と考えさせられた記事でした。
【追記】
神奈川県の土砂災害警戒区域等区域マップ
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/sabo/bousai/keikai/imgmap.html
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使い方は、神奈川県マップ(図-1)→地域選択(図-2)→詳細マップ拡大(図-3)
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名無しさん、こんにちは
記事から引用しませんでしたが、国交相の“(警戒区域の)指定手続き簡素化を検討”するとの発言があったそうです。
個人的には、こと災害対策に関しては、行政に“強制力”を持たせる必要があるのではないかと感じました。
それにしても、今回の被災地をGoogleマップで見て、都市部からほんの数キロしか離れていないのに驚きました。広島の平野部があんなに狭いとは...
投稿: 大師小ブログ主 | 2014/08/23 10:12
国土の条件や人口の多さを考えると、いろいろと難しいですね。
今回の惨事でも、大雨への警戒は呼びかけられていましたが、
気安く『自己責任』という言葉は使いたくありません。
土砂災害警戒区域の指定に関して言えば、
公権力による私権の制限を、どれだけ受けいれる事ができるか?
住民の立場では判断が困難かと思います。
一部では行政の対策遅れ、対応のまずさを指摘する声もあるようですが、
あまり咎め立てをしすぎるのもいかがなものかと感じました。
それにしても将来への「教訓」と言ってしまうのも酷なほど甚大な被害で、
被害者に思いを致すと心が痛みます。
投稿: 名無し | 2014/08/22 13:41