【生活】平成27年(2015年)1月からの相続税増税とその対策
昨日の読売新聞朝刊に、平成27年からの相続税増税の特集記事がありました。
新聞記事によると、この改正によって、東京国税局管内(東京、神奈川、千葉、山梨)で、2010年の課税対象は亡くなった人の7%だったのが2015年以降は15%に倍増するという試算が出ているそうです。
今回の税制改正は、下に書いたように、“控除が大幅に減らされる”というものなので、親が亡くなった後に預貯金などを整理してみたら相続税の対象になった(あるいは、なりそう)という例も増えてくるかも知れません。
【平成27年1月1日からの税制改正ポイント】
- 課税対象額をを算出するための基礎控除が大幅に少なくなる
- 現行法: 5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数
- 改正後: 3,000万円+600万円×法定相続人の人数
- 税率が10%~50%から10%~55%に拡大
- 遺産(課税価格)が2億超の場合に影響あり
他の改正点については、『平成27年の相続税増税であなたも課税対象になる!?』〔All About〕などを参考にして下さい。(減税要素の改正もあり→「小規模宅地の評価減の特例」の拡大。←意図としては、相続する家(宅地)に元々同居している場合、その評価額を減じてあげましょうというもの)
まだ両親のどちらかが健在なら、配偶者控除が使えるのですが、そうでない場合に、子供に相続税がのしかかってくる可能性が増えることになります。
実は、ブログ主も、「相続してみたら相続税がかかりそう」と、慌てて相続税を勉強したことがあるので、相続する側だけでなく、「親として子供にかかる相続税が心配」といういう方にも役立つよう、自分の経験を踏まえて、遺産相続の実務面の注意点などを書いておこうと思います。(但し、あくまでも“庶民”の実体験
だと言うことを予めお断りしておきます。また、複雑な相続税の計算方法を完全に網羅するものではないので、概略を説明するものとご理解ください。)
相続税について詳しく学ぶには
最近はネットでも情報を得ることができますが、金融機関にもパンフレットや小冊子を用意しているところが少なくありません。(特に信託銀行。「マンガでわかる相続読本」みたいなものをもらいました。)
メインバンクとしている金融機関に問い合わせてみたらいかがでしょうか。
相続税計算の流れと実務
相続税の計算の流れは下図のようになっています。1と2を現時点で試算してみれば、相続税がかかるのかどうか、おおよそ知ることはできると思います。
以下、この図に沿って、税制改正による影響と補足説明を加えます。
1.遺産総額(課税価格)の計算
遺産総額: 遺産と聞いて、まずパッと頭に浮かぶのは金融資産と土地・家屋ですが、資産価値のある美術品、(高級)家具なども含まれます。
なお、相続税のかからない財産もあり、主なものは生命保険(被相続人=故人が保険料を払っていたもの。但し非課税限度額あり。※)や仏壇仏具、生前に取得していた墓地などがあります。これを利用して、相続税対策に金の「おりん」のような資産価値のある仏具を購入する人も増えているそうですが、こういうものは投機対象と見なされる恐れもあるそうです。
※詳しくは『No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金』(国税庁HP)
課税価格: 債務(借金)がある場合、遺産総額からこれをを引き、更に葬儀にかかった費用(但し、墓地や墓石購入費用は不可。)を差し引きます。
こうして計算された評価額が課税対象となる遺産(=「課税価格」)です。(これ以降、単に「遺産」と呼ぶことにします。)
この遺産から、後述する「基礎控除額」を引いたものが課税対象額となり、課税対象額が0以下なら(=基礎控除以下なら)相続税はかからず、基礎控除額に納まらなければ相続税がかかる、ということになりります。基礎控除額の計算方法は次章で説明します。
■実際の作業(遺産の概算調査方法)
最初にさらっと「金融資産と土地」と書きましたが、これも実際に調べるとなると結構大変だと思います。
【預貯金、その他金融資産】
預金や貯金は通帳があるので、比較的分かりやすいのですが、親子とは言え、こういうものは目に付かないところに置いてあるものなので、“ありか”を知らない場合もあるからです。
これ以外に、株や投資信託などの投資をしている場合、通帳のようなものがなく、資産はネット上で管理している場合が多いので、証券会社に問い合わせないと全額(評価額)は分からないと思います。
なお、厳密には、亡くなった日の時価で評価しなくてはなりません。最終的に相続税を払うことになったとして、その申告書類を作成するときは、各金融機関に(死亡日時点での)残高証明書を作ってもらう(銀行は有料)必要はありますが、通帳なら記帳してみればおおよその額は分かります。
【土地(住宅用地)】
次に土地の評価額ですが、これを計算するためには、土地の正確な図面(家を建てたときに測量した図面など)を基に、その土地の面している道路の路線価というもので計算します。(【参考】→『No.4604 路線価方式による宅地の評価』(国税庁HP)
路線価というのは各道路に決められた価格で、例えば、土地が角地で2辺が道路に面している場合、計算にはそれぞれの路線価が必要です。土地の形がきれいな四角形だと簡単ですが、複雑な形だとやや面倒になります。路線価は税務署で閲覧するか、現在は国税庁HPでも閲覧できるようです。(【参考】→『路線価図・評価倍率表』)
なお、「小規模宅地の評価減の特例」というものがあります。(詳しくは、『平成27年の相続税増税であなたも課税対象になる!?』〔All About〕に説明があります。)
【住宅】
家屋の評価額は固定資産評価額(固定資産税の計算根拠)なので、固定遺産の納税通知書の記載額を見るか、市(区)役所などで知ることができます。
■相続税対策
新聞記事によると、賃貸住宅を建てると土地の評価額が下がるので、生前に賃貸住宅を建てて課税対象の財産額を減らす方法が人気だそうです。
ほかにも、生前贈与(基礎控除額:年間110万円/一人当たり)を毎年行っておく方法や、祖父母が孫などに教育資金を一括贈与すると一人当たり1,500万円まで贈与税がかからない特例を利用する方法も紹介されていました。(とは言え、シェークスピアの「リア王」のようなパターンもあるかも...
)
2.課税対象額の計算
遺産の総額が分かれば、相続人の人数で「基礎控除額」を計算し、課税対象となる額(課税対象額)を計算します。
課税対象額=「遺産」(課税価格)-「基礎控除額」
前章に書いたように、ここで相続税がかかるのかどうか、だいたい判断できます。
「基礎控除」の計算は、現行は、5,000万円の基礎控除に、更に法定相続人の人数×1,000万円の基礎控除を合計した額です。
改正後は、この額が、3,000万円の基礎控除と法定相続人の人数×600万円に減ります。
具体的な例として、夫の残した遺産が1億円あって、妻と子供2人の合計3人が相続人の場合で見ると、下記のようになります。
《現行》
- 1億円-(5,000万円+1,000万円×3)=2,000万円(=課税対象額)
《改正後》
- 1億円-(3,000万円+600万円×3)=5,200万円(=課税対象額)
ここで、法定相続人といういう言葉が出てきました。(詳しくは『No.4132 相続人の範囲と法定相続分』〔国税庁HP〕参照)
金融機関から預貯金などを相続する(名義を換える)場合は、法定相続人を確定するために、被相続人(相続される人=故人)の戸籍謄本(出生から亡くなるまでの連続したもの)の提出を求められます。
これは何のためかというと、平たい言葉で言うと、隠し子などの法定相続人が他にいないことを証明するためです。「ウチのお父さんに限ってそんなものはいない!
」と思っても、金融機関にそれを証明しなくてはならないのです。
そのために、場合によっては、被相続人の故郷の親戚などに頼んで、出生から結婚までの戸籍を取り寄せたりしなくてはなりません。
金融機関で相続手続きを行う場合、金融機関所定の「遺産分割協議書」を提出させられます。これは、例えば、この定期預金は子供の一人が相続するとした場合、他の相続人全員がそれに同意することを、署名・捺印で証明するものです。(この捺印は実印なので、持っていない場合は作成する必要があります。)
ここまで書くと、場合によってはややこしいことになる
というのが想像できるかと思います。被相続人の出生地が遠方の場合や、思わぬ相続人が見つかったり、遺産分割協議書に署名・捺印してもらう相続人が遠方に住んでいる、相続人の中に遺産の分割方法に不満を持つ人がいたり...という場合です。
金融機関での相続手続き、土地の相続(登記簿の名義変更)や、これらの手続きの依頼先については後述します。
3.相続税の総額計算
課税対象額が計算できたら、次に法定相続人(この例では、妻=配偶者、子供2人)が「法定相続分」に応じて取得したものとして取得金額を計算(1)し、それぞれ税額を計算し合算(2)します。
「法定相続分」とは、配偶者が1/2と定められており、残りを子供の人数で分けるので、1/2のさらに1/2ずつ、つまり、子供は1/4ずつになります。
(1) 2で求めた課税対象額は、現行法では2,000万円、改正後は5,200万円なので、法定相続分は、
《現行》
- 配偶者: 2,000万円÷2=1,000万円
- 子供一人当たり: 2,000万円÷4=500万円
《改正後》
- 配偶者: 5,200万円÷2=2,600万円
- 子供一人当たり: 5,200万円÷4=1,300万円
となります。
(2) 「税率」と「速算控除額」(※)は現行も改正後も、取得金額「1,000万円以下」は10%/控除額0円、「1,000万円超~3,000万円以下」は15%/控除額50万円なので、
《現行》
- 配偶者: 1,000万円×10%=100万円
- 子供一人当たり: 500万円×10%=50万円
- 合計: 100万円+50万円×2人=200万円
《改正後》
- 配偶者: 2,600万円×15%-50万円(控除額)=340万円
- 子供一人当たり: 1,300万円×15%-50万円(控除額)=145万円
- 合計: 340万円+145万円×2人=630万円
と、相続税の総額が計算できます。このあと、実際の各人の相続額に応じた税額を計算します。
※相続税の速算表はネットで検索すれば簡単に出てくると思います。(【参考】→『相続税の計算方法』〔All About〕:現行の税率)
現行「1億円超~3億円以下」が40%なのに対し、平成27年1月1日からは、「1億円超~2億円以下」が40%、「2億円超~3億円以下」45%と小刻みになり、最高税率が現行は「3億円超」50%なのに対し、改正後は「6億円超」55%と引き上げられています。
4. 各相続人の相続税計算
上で、相続税額が現行法で200万円、改正後で630万円と計算されました。
この数字を基に、実際の相続額で按分比例します。
この例では遺産総額は1億円としましたが、実際に取得する額は配偶者1/2、子供が1/4ずつとは限らず、例えば、妻が全額とか、妻6,000万で子供が2,500万と1,500万円などという場合があるので、遺産の総額に対する実際の取得金額の割合で、各々の相続税額を計算します。
つまり、「実際のその人の相続金額÷遺産の総額」で割合を求め、相続税の総額に掛けて、それぞれの相続税額を計算します。また、配偶者は1億6千万円以下の取得額なら全額控除されるという「税額軽減」の制度があります。(但し、「税額軽減」の適用を受けるには、申告書の提出が必要。)
分かりやすくするために、ここでは法定相続の割合通り、妻5,000万円(50%)、子供2,500万円(25%)ずつ相続したものとします。
《現行》
- 配偶者: 200万円×(5,000万円/1億円)=100万円→配偶者控除で0円
- 子供一人当たり: 200万円×(2,500万円/1億円)=50万円
《改正後》
- 配偶者: 630万円×(5,000万円/1億円)=315万円→配偶者控除で0円
- 子供一人当たり: 630万円×(2,500万円/1億円)=157.5万円
これが各相続人が実際に納税しなくてはならない税額です。
5.相続税の納税
相続税の申告書類を作成して税務署に申告し、相続税は銀行などで、通常の振り込みと同じような要領で納税します。
申告書類の作成を依頼する場合、依頼先は税理士になります。
相続の手続き
預貯金や株などの資産を相続する人の名義に換える手続きは、各金融機関で行います。
また、土地などの不動産の名義変更は、実際に受け付ける役所は法務局ですが、手続きの代行を依頼する場合は、司法書士に依頼します。建物の滅失登記(存在していない事の登記)は土地家屋調査士の担当です。
金融機関での手続きでは、相続人全員の同意書(遺産分割協議書)のような金融機関所定の用紙に記入する書類の他に、添付書類として、公的書類、例えば被相続人の戸籍謄本や、住民票、印鑑証明などが求められます。
したがって、故人が多くの金融機関を利用していたら、その分だけ添付書類も必要なので、戸籍謄本など、予め必要な分だけ入手しておくか、その都度、自分で役所に赴いて入手する必要があります。また、遺産分割協議書も、手続きをする人が、相続人それぞれに署名・捺印を依頼して、書類を整える必要があります。
こういった作業を含めて、相続手続き全体をコントロールしてもらうなら、行政書士に依頼します。司法書士や土地家屋調査士などへの依頼も行政書士経由で行えます。(一般的に、相続関係の実務の8~9割は行政書士が行うことになるそうです。)
ここまで、行政書士、税理士、司法書士などという名前が出てきましたが、もちろん、こういった人たちの手を借りずにできる人もいるでしょう。ただ、相続人は、家族を失った心労のみならず、様々な手続きに忙殺されて肉体的にも疲れている場合も多いので、依頼する場合の参考にして下さい。
エンディングノート
昨今、「エンディングノート」なるものが流行っているようです。
エンディングノートとは、自分の死後や認知症などになり意思疎通が難しくなった場合に、延命処置や葬儀などの希望を書いたり、自分史などを書き残すものだそうですが、注意しなくてはならないのは、たとえ相続に関する遺言のようなものを書いても、法的拘束力のあるものではないということ、また、正式な遺言でも同様ですが、感情に任せて書いたものは、かえって残されたものの間に遺恨を残すかも知れません。(もちろん、家族の心の負担を軽減するような良い効果を生む可能性もあります。)
法的に有効な遺言(いごん:ゆいごんの法律用語)の作成は行政書士の仕事の範疇で、行政書士を「遺言執行者」に指定することで、相続発生後、これまで説明した相続手続きに入ってくれます。
ここで、知人の行政書士のブログ記事『遺産争族』をご紹介します。ここまでこじれると、弁護士の出番になります。
エモーショナル(感情的な)部分もそうですが、子供などに対して相続の実務的な負担を軽減してあげるのは必要かも知れませんね。
既に書いたことからピックアップしてまとめてみると、こんな感じになります。
- 資産を把握しやすいように一カ所に整理しておく。(金融機関の一覧メモ、通帳、印鑑、登記簿や測量図、等)
- 相続税を節約するために、可能な範囲で対策しておく。(生前贈与や教育資金の一括贈与など)
- 法的効力のある遺言作成(但し、残された者の争いの種にならないよう、行政書士などの客観的なアドバイスを受ける。)
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達磨さん
補足説明をありがとうございました。
そもそも、新聞記事が不親切だったのです。具体的な例で、改正後の税額はこうなるって数字を出していたのに、その根拠となる速算表(税率・控除額)が掲載されていなかったので、電卓を叩いて計算してみて、それで、せっかくなので記事にしておこうと思った次第です。
遺言書も封がしてあった場合、自筆の場合、知識がなくて不備があると問題があるんですよね。この辺は専門家のアドバイスを受けた方が良さそうですね。(まあ、ウチの場合はそんなものなかったのですが。)
とにかく、(額はともかく、)取引している金融機関が多いと、その対応が大変だと思います。
記事には書かなかったけど、銀行の慇懃無礼さに何度も切れそうになりましたw(実際、お客様相談係みたいなところに苦情を何度入れたか...) 郵便局や証券会社は親切だったんですけどね。
投稿: 大師小ブログ主 | 2014/08/21 23:11
七転八倒をしている達磨です。
実体験に裏付けられた記事がものすごく詳細で、
コピペをしたくなりました。
士業の立場で多少の補足というか、追加情報をコメント。
ただし税に関する部分は省きます。
☆税金納付期限
相続が発生してから10ケ月以内となります。
但し名義変更そのものは期限が無いので、
場合によっては祖父・祖母・父の三次にわたる相続を、
一通の協議書で事務処理した事もあります。
(数次相続と言います)
☆戸籍の追跡
離婚経験者が、前の婚姻期間に子供が生まれていれば、
当然に相続人になりますね。
隠し子ばかりではありません。
ちなみに非嫡出子(隠し子)も法定相続分は同等です。
☆エンディングノート(遺言)
自筆による遺言は、家裁での検認を受ける必要があります。
当然にして、戸籍類の一切が必要となります。
『公正証書』については、提供した情報が不足していました。
我々は『公正証書』の原案を作成する立場です。
実際の『公正証書』は公証人が作成します。
(公証役場で、あるいは出張して頂く事も可能です)
我々は遺言作成指導を含め、相当に幅広く関与します。
☆執行者
未成年・破産者といった欠格者を除き、誰でも就任可能です。
但し当事者の就任は、あまりお勧めしていません。
相続・遺言といった事柄であれば、私に限らず行政書士は、
かなり親身に相談対応をすると思います。
投稿: 川崎大師の達磨 | 2014/08/21 22:36