【ドールハウス工作】 No.144カキツバタのミニチュア/ 『ショウブの悲哀』
(。◕‿◕。) 今回はカキツバタ(燕子花、杜若)のミニチュアです。
実はまだ完成ではないのですが...
カキツバタは湿性植物なので、そのうちにレジンを流し込んで、株元が水に浸かっているような表現をしようと思っています。
紙はレジンを吸い込んでしまうので、株元には防水スプレーを掛けてあります。このスプレーはインクジェットで印刷したプリントアウトに使用するもので、スプレーしてすぐは濡れたような状態になりますが、すぐに乾き、シミにもなりません。(宛名ラベルのにじみ防止、ペーパークラフトの印刷保護に使用できます。)
花は樹脂(風)粘土、茎はダイソーのワイヤー、葉は紙で作っています。草丈は実寸5cm程度で、これは1/12スケールの世界では60cmくらいに相当しますが、実際のカキツバタも50~70cmなので、だいたいこんなものですね。
鉢に見立てた容器は、100円ショップ・セリアのスイーツデコ(ミニチュアスイーツ)用の容器で、陶器でできています。直径は4cm強なので、50cmくらいでしょうか。紙粘土を詰めて花を植え、表面には川砂(園芸用のものを振るったもの)に園芸用の白い化粧砂を混ぜたものを載せています。
ところで、カキツバタはアヤメ科(Iridaceae)アヤメ属(Iris)に属していて、日本特有種で同じアヤメ属の「アヤメ」(sanguinea)と「ノハナショウブ」(ensata var. hortensis/ノハナショウブは原種、ハナショウブは改良種)、「カキツバタ」(laevigata)の違いや見分け方というのはよく話題になります。(下図-左からアヤメ、ノハナショウブ、カキツバタ、ショウブ)
花びらの形や模様、葉の主脈(中心の線)が目立つかどうか、生育場所(湿地か乾いた土地か)などで見分けることができ(→『アヤメの仲間の見分け方』〔加茂花菖蒲園HPより〕など、分かりやすく説明したサイトがあるので、ここでは詳しく書きません。)
ここで話題にしたいのは、「ショウブ」で、これが実に気の毒な植物なのです。
ショウブは5月の端午の節句の「菖蒲湯」に使う葉のことで、芳香があり、以前、『こどもの日になぜ柏餅を食べるの?』にも書いたのですが、平安時代から、旧暦の5月(現在の暦で言うと6月の梅雨の時期)ショウブやヨモギといった香気の強い植物で邪気を払うという風習がありました。紛らわしいのは、ひな祭りの桃のように、一緒にハナショウブを飾るので、あのきれいな花のショウブ(実際はハナショウブ)の葉だと思われがちですが、こちらはサトイモ科の植物で、ショウブの花は肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる、ヤングコーンのような地味なものです。
このことから分かるように、本来は端午の節句の主役なのに、兜と一緒に床の間に飾られるのはハナショウブのほうで、主役はお風呂の中に放り込まれ...と、喩えると、歌は上手いのに、可愛い娘(こ)にアイドルグループのセンターを取られちゃったようなかわいそうな花なのです。
この、“元祖”ショウブの悲劇はこれにとどまりません。ショウブは実は“元祖”アヤメなのです。
「六日の菖蒲(あやめ)」という『平家物語』に出てくる言葉がありますが、5月5日の節句の翌日のショウブのことで、「後の祭り」のような意味で使われます。
また、吉田兼好の徒然草「五月、あやめふくころ、早苗とるころ、水鶏(くいな)の叩くなど、心ぼそからぬかは。」の「あやめふく(葺く)」とは、邪気を払うためにショウブで屋根を葺く風習のことです。
どうやら、花のきれいなアヤメは、元祖アヤメに葉の形が似ていることから、そう呼ばれることになったようで、花びらに「文目(あやめ)>虎斑=網状の模様」があるからという説は後からのこじつけのようです。
このため、古くは、アヤメをハナアヤメ、ショウブをアヤメグサと呼んで、区別していたのですが、ここでも美しいアヤメに“センターを取られてしまった”ようです。
せめて、端午の節句にはこのかわいそうなショウブのことを思い出してあげください。
ブログ主は元々植物好きで、植物を育てたり、鑑賞するときは、よく学名や和名、その名前の由来も調べるのですが、カキツバタについても調べてみました。
カキツバタの語源は、「書付花(かきつけばな)」という万葉の時代にさかのぼる名前で、花を布にこすりつけて紫色に染めるのに用いたことから来るそうです。
では、漢字の「杜若」(としゃく)、「燕子花」(えんしか)はどこから来たのかというと、植物分類学者の牧野富太郎先生によると、中国の「杜若」=ショウガ科のアオノクマタケラン、「燕子花」=キンポウゲ科のオオヒエンソウ(大飛燕草)=デルフィニウム(下図-左)と混同したのだろうとのことです。なお、有名な尾形光琳の屏風図は「燕子花図(えんしかず)」(下図-右)と呼ばれています。
【参考】
- 植物一日一題 (『青空文庫』/牧野富太郎)
- カキツバタ一家言 (『青空文庫』/牧野富太郎)
- 園芸植物名の由来
(東京書籍/中村浩著)
- 蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか―日本人の暮らしと身近な植物
(草思社/稲垣栄洋著・三上修絵)
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