【書籍】『野球盲導犬チビの告白』(井上ひさし著/実業之日本社)
この本の存在は、『最後のクジラ-大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生』(赤坂英一著/講談社)で知り、面白そうと読んでみた。
“野球盲導犬”チビが語る、横浜大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)に所属する盲目の打者田中一郎の物語。舞台は昭和54年(1979年)のセリーグペナントレースで、対巨人戦を中心に描かれている。
チビは球団の計らいでユニフォームのようなものを身につけ、主人の田中一郎がバッターボックスに立つときには、田中のホームラン数を表す星のシールがついたヘルメットを被って出場するというファンタジー小説。
面白いのは、監督をはじめ、選手などの登場人物は実名で、登場するエピソードも虚実織り交ぜており、この当時のプロ野球ファン、特に大洋ファンなら懐かしいこと請け合いの小説。
例えば、チビがシピン(ジョン・シピン/John White Sipin:1978年に金銭トレードで大洋から巨人に移籍)を語る件(くだり)では、「ぼくのことを一番しつっこく苛めたのはシピンだな。この男には「さん」はつけない、いや、絶対につけたくないんだ。覚えてるかな、去年の大洋-巨人戦で、この男がうちの門田さん(ブログ主註:門田富昭/かどたふみあき)に襲いかかった事件を。...」などと、実際にあったエピソードが登場する。
また、ある試合のスターティングオーダーは、
大洋: ①(左)田中、②(二)ミヤーン、③(右)高木、④(一)マーチン、⑤(中)長崎、⑥(三)基、⑦(遊)山下、⑧(捕)福島、⑨(投)遠藤
巨人: ①(中)柴田、②(遊)河埜、③(一)王、④(二)シピン、⑤(左)張本、⑥(右)淡口、⑦(三)中畑、⑧(捕)山倉、⑨(投)江川
である。(ちなみに、この年の開幕戦オーダーは①(遊)山下 、②(二)基、③(中)長崎、④(右)マーチン、⑤(一)松原、⑥(三)田代、⑦(捕)福島、⑧(左)中塚、①(投)平松、らしい。)
ここで、気づくかも知れないが、1979年とは、江川卓投手が巨人に異例のトレードで入団した年である。
この本の出版当時(1986年11月)のことはよく分からないので推測だが、小説は、この“事件”がヒントになっているのかも知れない。野球協約の隙間を縫って契約ができるなら、盲導犬を連れた盲目の選手がプレイできてもおかしくない、と。
しかし、不思議なのは、なぜ、田中一郎の所属チームが大洋ホエールズなのだろうか? Wikipediaの情報だが、著者はヤクルトファンだという。ただ、この著者の作品は、マジョリティ(majority)に対するマイノリティ(minority)、中央に対する地方、つまり、権力者に対する弱者の怨嗟(えんさ)が根底にあるものが多いので、巨人対大洋という構図にしたのかも知れない。(ちなみに、下は2013年までのベイスターズの順位推移表【出典:Wikimedia】)
最後に一言。
巨人ファンは決してこの本を読んではいけない
【関連リンク】
- 1979年の野球(Wikipedia)
- スポニチ/日めくりプロ野球 『【10月25日】1979年(昭54) “最高齢”36歳、球団初の首位打者ミヤーン』
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