川崎大師寺宝展『浮世絵に見る-多摩川』 布さらし・鮎漁
先日、大師(近辺)で買い物をするのに、“だいっさま”(川崎大師)の境内を通り抜けようとしたら、寺宝展をやっているのに気づきました。(入場無料)
今回は3回目で、サブタイトルに「多摩川の布さらし、自然と鮎漁、そして新田義興(にったよしおき)の古事による神霊矢口の渡し」とあります。
下は、入り口で頂いたパンフレットで、展示物のカラー版図とともに説明が書かれた立派なものです。(以前もこのシリーズの展覧会を見ましたが、同じタイプのもの)
説明によると、東京都川崎の境を流れる多摩川は、古来より他の5つの玉川とともに歌枕(和歌に詠み込まれる名所旧跡)として和歌に詠まれた『六玉川(むたまがわ)〔※1〕』の一つで、『調布(てつくり〔※2〕)の玉川』と呼ばれていたそうです。
この六玉川は、例えば、
「たつくりや さらす垣根の 朝露を つらぬきとめぬ 玉川の里」(てつくりや さらすかきねのあさつゆを つらぬきとめぬたまがわのさと)
(『拾遺愚草』〔※3〕藤原定家)【意味】手織りの白布を曝したように、垣根にびっしりと付いた朝露。それらが貫き留めていない玉のように散り乱れる、玉川の里よ。
のように歌に詠まれるだけでなく、絵の題材にもなっていたそうで、展覧会では喜多川歌麿、歌川広重、鈴木春信、葛飾北斎をはじめとする江戸期の浮世絵や肉筆画が展示されています。
これらの絵を見ると、水にさらして、臼と杵でつく作業の様子がよく分かります。
また、副題の一つ、新田義興(1331-1358)の古事とは、竹澤右京亮(たけざわうきょうのすけ)、江戸遠海守等の策略に陥り、矢口渡に於いて憤死した新田義興の怨霊が雷雲の中、白栗毛の馬に跨がって現れ、竹澤等に報仇(ほうきゅう)したというものだそうです。
なかなか見応えのある展覧会なので、川崎大師参詣の際には是非ご覧下さい。御護摩受付所地下ホール で5月21日までやっています。
(川崎大師のパンフレットより。御護摩受付所は○印の場所です。)
なお、以前、アド街ック天国で紹介された『宝さらえ』は上の見取り図、★印の場所で買えます。ブログ主が見たときにはいくつか陳列されていました。
なお、川崎市立図書館のwebギャラリーの『浮世絵に描かれた川崎』で今回展示された浮世絵を含む図書館所蔵の浮世絵を見ることができます。(下はインデックスです。)
1.川崎宿と六郷の渡し
2.東海道
3.大師参詣
4.地場産業
5.古事・役者絵
6.多摩川
7.調布多摩川
8.京浜間鉄道
※注釈
- 六玉川(むたまがわ)…全国に6箇所ある玉川を総称して言う。調布(たつくり)の玉川以外に、宮城県塩釜市・多賀城市を流れる野田の玉川、滋賀県草津市を流れる野路の玉川、京都府綴喜(つづき)郡を流れる井手の玉川、大阪府高槻市を流れる三島(千鳥)の玉川、和歌山県高野山奥院付近を流れる高野(たかの)の玉川。
- 調布…てつくり、てづくり、たつくり、たづくり 等の表記が見られる。調布市の調布とは、古代、麻が栽培され、多摩川の水にさらして布を織り、調(租税の一つ)としたことによる。
- 『拾遺愚草』(しゅういぐそう)…鎌倉時代の私家集で六歌集の一つ。藤原定家自撰。3800余首を収める。
【追記】
2012年の多摩川での鮎の遡上を報じる記事
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