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2010/12/29

『國語元年』

「“あっちかし”持ってくれる? 私が“こっちかし”持つから。」

これは、会社で川崎出身の同僚とテーブルか何かを運ぼうとしていて発した言葉で、それを聞いていた別の同僚に思いっきり笑われました。

(´・ω・`) …

“あっちかし”、“こっちかし”が方言だと気付いた瞬間でした。

まぁ、ブログ主を含め同窓生の皆さんは、あまり方言らしい方言はしゃべらないけど、同級生が集まると、小学生の時のしゃべり方がついつい出ちゃいますよね。

「~だべ」とか。(TVだと、スマップの中居君がそういう話し方しますね。調べたら藤沢出身だとか。)

語尾に関して言うと、我々が話す「~です。」は「DESU」ではなくて、「DES」と、母音を省いて言いますね。

こんなことを思いだしたのは、日曜日の深夜に一挙再放送された井上ひさし作『國語元年』を観たから。(リンク先はNHKサイトの該当ページ)

長いので、録画したものを少しずつ再生して観ました。

内容をコピペすると、

明治初期、”全国統一話し言葉”制定を命じられた文部官僚・南部清之輔。まず家中から統一を試みるが、清之輔は長州弁、妻と舅は薩摩弁、使用人たちは遠野弁、津軽弁と家中は大混乱に・・・。言語と近代国家の緊張関係をユーモラスに描いた。

 

観ている内に段々と放送当時の記憶が蘇り、結末を思いだしてきて、

ちょっと il||li(つω-`。)il||li という気分になったけど...

いわゆる「トラジコメディー(tragicomedy)」というのか、ドタバタ劇なのに結末はかなり重いストーリーです。

そう言えば、日本人が親しんだ『寅さん』の映画は、外国では「喜劇」とは見なされないとか。何かの本で読んだののうろ覚えなので、外国というのはどこか特定の国だったかも。所々に潜む、「暗さ」や「悲しさ」のせいなのだろうけど。(でも、かつてのウィーン市長さんが寅さん映画の大ファンで、そのために葛飾区にモーツァルトの銅像を建てる許可が出たのは有名な話だから、受けないというわけではなさそう。)

ドラマで、川谷拓三さん演じる長州出身の主人公が新しい話し言葉を作ろうと悪戦苦闘するのを、乱暴だけどいちいち問題点を指摘する、佐藤慶さん演ずる会津出身の元武士の正論は、山形出身の著者の言葉を代弁しているのかもしれません。

ふと思いだして、司馬遼太郎氏と井上ひさし氏の対談が載っている本を引っ張り出してみたら、井上氏は長州に対してコンプレックスを持っていて、山口に対しては反感が9割とか発言している(『日本語と日本人』/中公文庫)ので、そういうものも反映しているのかも。

番組の途中に挟まれていた座談会によると、明治政府の文部省で、「全国統一話し言葉」なるものを作成しようとしたのは事実のようで、ただし、それに関する詳しい記述がないそうです。

上述の本の中でも、「そうです」と言う表現は深川の芸者衆(辰巳芸者)の言葉から来ていると書いてありましたが、事実は、ドラマのように政府機関(国語審議会とか)によって作り出された部分もあれば、自然と標準語に昇格(?)したお国言葉なんかから成立しているのでしょうね。

 

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もう一つ、ドラマを見ていて思いだしたのは、この秋に読んだ『冬の派閥』(城山三郎著)。

幕末の尾張藩を描いた作品だけど、後半は北海道に入植した元藩士達の物語りになります。これが、ドラマに出てくる元会津藩士の過酷な状況と重なりました。

ドラマ初見の時はドタバタ劇を笑っていただけだけど、中央(標準語)対地方(方言)、官軍対賊軍といった構図にマイノリティの怨嗟を込めた作品だったのかと、衝撃的な結末にも納得しました。

【追記】

ドラマを見ているときは気付かなかったけど、主人公の南郷清之輔を度々叱責する上司として、名古屋出身の田中不二磨(たなかふじまろ)という人物が名前だけ登場しますが、『冬の派閥』にも登場しているのを思い出しました。

それで、少し追記しますが、尾張藩は『青葉松事件』と呼ばれる佐幕派弾圧を行い、御三家の一つでありながら討幕派に転じたものの、新政府で登用される人物はほとんどありませんでした。唯一、田中不二磨が例外ですが、彼は佐幕派弾圧を行った金鉄組と呼ばれる尊皇派の代表的的人物でした。

他の金鉄組の面々はと言うと、なぜか不可解な死を遂げる者が多く、一部が前述の通り北海道に移住してからも、不慮の死が続くなど、田中不二磨とは対照的な人生を歩みます。

官軍の中でも明暗があり、『勝てば官軍』というほど単純な話ではなかったということですね。

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