残暑厳しき折ですが、そろそろ「読書の秋」
まだまだ暑い日が続いていますが、夜になると虫の音が聞こえるようになり、少しずつ秋めいてきました。
先日、NHK BShiで放映された『妖しき文豪怪談』の第四夜、室尾犀星の「後の日」を再放送で観て、ふと、「ふるさとは遠きにありて思ふもの」で始まる詩の全文を読みたくなりました。
以前の記事『NHK 『妖しき文豪怪談』...よりも怖い話』にを書いたのはこの作品を観る前で、原作が分からなかったけれど、短編小説の『童子』と『後の日の童子』を元にしたものだそうです。奇を衒(てら)わない落ち着いた映像で、4作品の中ではこれが一番気に入りました。「奇を衒(てら)わない」と書いたけれど、第一夜の『腕』は、原作自体が幻想的な作品なので、これはこれで、原作の雰囲気は出ていたように思います。
原作が収録されているのはこの本のようです。
室生犀星集
価格:1,050円(税込、送料別)
詩は簡単にネットで見つかるので、転載はしませんが、詩人の人生をドキュメンタリーで知った後で読んでみると、より、味わい深いものだと思いました。
また、感じたのは、美しい日本語だな...と言うこと。
久々に詩集を読んでみたくて、本棚を漁ったけれど、目当ての詩集が無かった...
探していたのは中原中也の詩集。
でも、ふと思い出して、アルバムを引っ張り出してみました。
画像は『また来ん春』のページ。
(画像の上で右クリックして表示されるメニューから「画像だけを表示」を選ぶと見やすいかも。)
20代の時に、中原中也の詩に感銘を受けて山口に旅行し、その時に映した写真に詩を書き添えておいたもの。(詩が読めるように大きな画像で掲載してあります。)
ご存じの方も多いでしょうが、2歳の息子、文也を亡くした後に詠んだ詩で、中也の詩の中で好きなものの一つ。〔詩人の詳しい解説はこちら(Wikipedea)〕
ちなみに、中原中也と聞いて思い浮かべるポートレート(上のリンク先に掲載あり)は、同じポーズで映した何枚もの写真から本人が選んだもので、一番、女の子のように可愛く映っているものを選んでいます。
アルバムからもう1ページ、『冬の長門峡』。
それにしても、紙のアルバムっていいですね。
こんな風にアルバムに貼ることは少ないのだけれど、この時は綺麗なアルバムを選んで、写真もコーナーシールで丁寧に貼ってと、かなり凝ってました。(写真はまだ撮り方を知らなかったので残念な出来映えですが...。)文字も普段とは違う書体で書いてます。
話が脱線しちゃったけれど、『妖しき文豪怪談』のお陰で、太宰など、久しく読んでいなかった作品を幾つか再読しました。(前回もご紹介したように、著作権の切れた作品の多くは『青空文庫』で読むことができます。)
しかし、ちょっと気になったことが...
森鴎外の『舞姫』を読もうと、Google先生に「舞姫」と入力してスペースを入れたら、自動的に「舞姫 現代語訳」という表示が。
そう言えば、数年前に、高校の教科書から森鴎外の作品が消えたというような内容の記事を読んだ記憶があります。
試しにそのまま検索してみると、個人的に現代語訳(口語訳)した文を載せたサイトがいくつも見つかりました。比較してみると、
石炭をば早(は)や積み果てつ。中等室の卓(つくゑ)のほとりはいと静にて、熾熱燈(しねつとう)の光の晴れがましきも徒(いたづら)なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌(カルタ)仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人(ひとり)のみなれば。
という原文が、現代語訳では、
石炭はもう積み終わったようだ。二等船室のテーブルのあたりはとても静かで、アーク灯の明かりが煌々と輝いているのも、妙にむなしい。今夜は、毎晩ここに集まるトランプ仲間もホテルに泊まっていて、船に残っているのは僕一人だけ。
となっていました。
確かに読みやすいけれど、個人的には原文でもそれほど難しいとは思わないし、せっかくなら、元の文章の格調の高さも味わえばいいのに、とは思うのですが...ね。
興味がある方はいないでしょうが、たまたま手元に独訳した『舞姫』があるので、同じ箇所を転記すると、こんな感じです。
Das Schiff hat neue Kohle geladen, und es ist nun wieder still ringsum. Die Tische im Speisesaal der zweiten Klasse stehen verlassen da, und die festlichen Glühlampen erleuchten nutzlos den Raum. Denn heute sind die Kartenspieler, welche sich allabendlich hier versammelten, an Land gegangen, um in einem Hotel zu übernachten.
文章を味わえるほどドイツ語が得意なわけではないけれど、上手な訳だなあと思います。
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